勇者の相談役
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「師匠!! 前回教えてもらった事を達成してきました。その過程で【アイスブレス】を覚えられたのは嬉しかったです。次は何をすれば良いでしょうか?」
相談室にネスティスが姿勢正しく、椅子に座りながら待っていた。蒼の長い髪と瞳。服装は学生服……といっても、前回とは違う制服だ。年齢は十五歳とフレアと同じ。
だからといって、彼女が俺をネスティスの相談相手に薦めたわけじゃない。
異界探索協会にある相談室は、建物の奥にある。それも相談内容が他のハンターに聞かれないよう、防音機能のある壁で閉ざされて、小さな箱のようになっている。
これのお陰で勇者が相談室で誰を選んだのか、分からないようになっているのは、俺にとっても都合が良いんだが……
「【アイスブレス】を習得したのか!? 一週間で……早過ぎるだろ。それも勇者のなせる事……だけで済まないんだよな」
「勇者の特権を利用されて貰えたので。魔力を上げていったら、使えるようになってました」
勇者。勇者とは職業の一つなんだが、レアな職業となっている。
現役のハンターは世界で数百いるとされているが、その中で七人。帝国にいるの勇者の数は、ネスティスを含めた三人だけ。
様々なスキル、上位スキルとまではいかないが、同職業と同じ経験値で習得出来るとされている。
他の職業が他職のスキルを覚えようとすれば、倍以上。もしくは、センスがなければ覚えられずに終わってしまう。
適正職業があるのはそのためだ。
「力と速さの成長度があるのは分かってたけど、魔力も一点集中で鍛えたわけか。その二つが少し下がってるな。特権という事は、ギルドを利用したんだろ?」
「勿論です。成長するためには、一番の方法なので。住み込みをされて貰ったぐらいです」
勇者の特権。職業には各ギルドが存在している。本来はその職業しか在籍出来ないのだが、勇者はそこでの修業を許可されている。
というのも、勇者は異界適正が凄い。今までの勇者達の行動で、不適合な異界がないとされている。
勇者でも異世界への侵入は今のところ無理だが、可能性が一番高いのは……だからこそ、勇者の力を高めるための特権だ。
期待の高い職業なのに、何故相談相手に俺を選ぶ!? トップハンターからの知識の方が良いはずだぞ。
「【アイスブレス】か。最初の魔法でそれを覚えるのは、氷属性と相性が良いんだろう。勇者が得意とする属性はそれぞれ違うからな」
「なるほど!! そういう意図があったんですね。魔力が低いのを考慮しただけじゃないとは思ってました」
「いや……そこまでは」
ネスティスはフレアと同じようにキラキラとした目を俺に向けてくるけど、本当に魔力の底上げのために言っただけなんだが。
それで魔法を使えるようになったら、ラッキーぐらいで……
「次は……異界にチャレンジしてもいいですか!!」
ネスティスはこれまでに戦士と踊子、今回で魔法使いのギルドで勉強している。
スキルでは戦士の【剣刃】、踊子の【身のこなし】、今回で魔法使いの【アイスブレス】を習得した。
ギルドは知識は提供するが、勇者といえど、上位スキル、魔法までは流石に渡さない。けど、初期スキルで十分だろく。
一人で三つも熟せば、レベルの低い異界挑戦でも十分な程ではある。
この三つを短期間で覚える事自体が凄い事なんだが……
「前から挑戦しても構わないと言ってるぞ。レベル3の異界でも、十分やっていけるとは思ってる。だが……」
ネスティスのパラメーターは協会から付与された銀の箱から見る事が出来る。スキルも同じ。
勿論、本人の許可が必要になる。相談を受ける側として、それを確認する事も重要だ。
まぁ……そこは俺にとっては必要ないんだけど……そこは置いておくとして。
彼女の能力だと異界レベル1や2ぐらいなら、難なく攻略出来るだろう。ただし……
「パーティーは決まったのか? 依頼……クエストを受ける気になったとか。クエストは定員があるが、全員ソロが集まるのもあるからな」
ソロではなく、パーティーであった場合の話だ。
戦闘経験、異界攻略も初。協会で攻略動画を確認出来たとしても、危険である事は間違い。
しかも、彼女は十五歳と若い。フォローしてくれる相手は必要だ。足りない能力をカバーする相手。逆でも貴重な体験となる。
職業が勇者であれば、パーティー勧誘は数え切れない程、引く手数多にあるはずなんだが……
「決まってないですし、クエストも今は引き受ける気はないです!!」
ネスティスはそれを拒否するんだよな。その理由は彼女から聞いてはいるんだ。




