円満……ではない
「う〜ん……ゼロストさん、申し訳ないのですが……今日はマニーさんと一緒に行動をお願いしても良いですか? 勉強にはなると思います」
「ゴイゼン所長!!」
フレアは俺をマニーに売った事に驚いている。売るというより、借りるか?
「フレアちゃん。所長はこういう事があるから」
「マーちゃんは所長の弱点を知ってるんだよ」
「未知の書物、文字は大好物だから。あんな事は言ったけど、欲しい目はしてたからね」
オジサン職員達はフレアに諦めろと遠回しに、優しい目で言ってくる。
「マスターと二人きりになるなんて」
「俺も直接指導された事はないのに」
「マイ×ゼンじゃないと……」
俺の場合は何も言ってないのに、組合メンバーから嫉妬の視線が突き刺さる。
「待て待て……俺に選択権はないのか?」
ゴイゼン所長は『お願い』と言っただけで、強制ではない。出張に来ておきながら、別の仕事をさせるのはアキテール支部の沽券に関わるぞ。
「ないわね。所長の許可もあるわけだから。【卑怯】というわけじゃないわ」
【妖艶】は【卑怯】という言葉を強調して言ってきただけじゃなく……
「この場を収めるためには貴方が【犠牲】なる事で円満になるんだけど?」
【犠牲】という言葉も強く言ってくる。それもニヤついた顔でだ。
フレアは不満に思ってるし、組合メンバーも良しとは思ってない。
全く円満じゃないんだが……【卑怯】と【犠牲】の言葉を使うための方便。
深読みかもしれないが、【妖艶】は俺が【道化師】と気付いている。
これ以上、駄々を捏ねようものなら、【道化師】だとバラす可能性もある。
「はぁ……分かりました。今日だけなら」
ここは渋々しながらも頷くしかない。俺を【道化師】と知って、誘ってくるのには理由があるはず。
まぁ……あちらも【妖艶】時代の頃の事を、ゴイゼン所長にはバレたくないだろう。お互い様ではある。
「本人からも了承を得られた事だし、貴方達は商品全てを【鑑定】出来たら、其々の商会へ戻りなさい。私は先に戻ってるから」
彼等は組合メンバーなだけで、同じ商会ではないらしい。組合=ギルドみたいなもの。組合として行動する時、制服を着るわけだ。
【妖艶】は知識を与える場を提供してる形なんだろう。
「マスター!! 戻るといっても、馬車は」
荷物を持ち帰る事もあり、【妖艶】の移動するだけに馬車は使えないのか。
「問題ないわ。彼が使えるはずだから。専用の馬車が止めてる場所まで、私が案内すればいいわけだし」
荷物運びのためじゃなく、【妖艶】専用の馬車があるらしい。しかも、停める場所も用意されてるとか……常連にも程がある。




