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美人秘書の怒声

「所長も君を支援するつもりだ。本部からは無くても、一つぐらいは道具を渡すぞ。俺の知り合いに良い職人がいる。そいつを紹介して、明日までに用意させる」


「本当ですか!! でも……そこまでしてもらうのは師匠の迷惑になるのでは……」


「そこは気にしなくていい。金は所長に出して貰うから。所長も文句は言えないはずだ」


 迷惑というなら、パーティーに組み込まれてる時点でそうだからな。解除が出来ないのなら、少しでも戦力の増強はさせて貰わないと。


 俺が出すつもりだった爺さんに出す金も、所長持ちだ。俺の新しい装備も加えて欲しいぐらいだ。いや……追加させよう。


 一年前の装備で、使えるかどうかも分からなくなってるからな。


「嬉しい!! 師匠が紹介してくれる職人さんは、もしかしてだけど……ジジという人ですか?」


「ん? 爺、ジジで間違いないが……何で知ってるんだ?」


 爺さんもネスティスが覗き見していたと言ってたからな。職人達が【無法者】メンバーが通ってた事を口に出していたとか?


「分かりました!! 時間もないし、場所は分かっているので、先に行きます。師匠は所長と話があるんですよね? そこで待ってます」


「ちょっと待て!! それは不味い。先に映像を見た方が良いんじゃないか!!」


「師匠が受付の人に言っておいてください。後から見ますから。断然、こっちの方が気になるので!!」


 ネスティスは俺が止めるのを無視して、颯爽と相談室から離れ、協会から出ていく。


 追い掛けるにしても、すでに俺よりも速いから。追いつける自信は全くない。


 それに周囲から見られたら、怪しい人でしかない。


「マジか……二人揃って、余計な事を言わないよな」


 ネスティスと爺さんが二人で会う事に対して、不安でしかない。


 本当は俺がネスティスを連れて行くはずで、爺さんもそう思ってる。しかも、時間も仕事終わりの遅い時間。


 予想外の出来事で、爺さんは【道化師】の名前を口走りそうだ。


 当然、ネスティスもそれに反応するだろうし、俺が【道化師】なのかを確認するかもしれない。【道化師】の名前が出た時点でアウトだ。


 それともう一つ。爺さんは彼女に合った装備を用意するため、体に触れるつもりだ。本人が了承しないままに触ってきたら……ヤバいだろ。


 爺さんならやりかねない。【卑怯】にもそうしたからな。それをネスティスに注意しておくべきだったと、今更後悔してる。


「こうなったら、少しでも早く合流しないと。まずは所長に詳細を聞いてからだ。……美人秘書には怒られないよな?」


 昨日に引き続き、所長の仕事を邪魔していると思われないかが不安だ。


 今回は俺じゃなく、本部からの依頼だ。映像の確認も勇者のためだし、その仕事を置いて、勇者を追い掛ける事も多めにみてもらおう。


 俺は受付嬢に所長室へ行くを告げるのと一緒に、【廃坑】の映像を用意するように頼み、そちらに向かう。


「聞いてません!! 勝手に決められるのは迷惑で、最悪なんですが!!」


 そこへ向かう最中に怒鳴り声が響いてくる。それも所長が怒るのではなく、怒られる側。


 美人秘書の怒声が廊下まで響き渡る。


 一旦下がり、勇者を追い掛けるのを優先した方がいい気もするが……

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