所長参戦
「本部からパーティーを組むように指示されてました。本当に!! 本当は嫌だけど、仕方ないです。けど、誰と組んでいいのか。誰か良いハンターはいないでしょうか?」
勇者に声を掛けられるのは名誉な事だと思う奴もいれば、面倒だと思う奴もいる。勇者の名前を利用する奴だって。
ソロハンターを誘うよりも、完成されたパーティーに一時的に組ませるのもありだと思うが、勇者の活躍よりも、そちらが目立つ可能性もある。
俺もハンターオタクではあるが、接触するのをなるべく避けていたから。ネスティスと同じ年齢ぐらいでいくと……
「パーティーには男性も必要なんですよね?」
「そうだな……俺を必要以上にジッと見てくるんだ?」
まさか……パーティーメンバーの一人に俺を指名なんかしないよな? 相談室の紹介に俺がハンターである事は書かれてない。単なる臨時職員でしかないから。
俺なんかを入れたら、他のハンターがビックリするだろ。
「相談の最中に申し訳ない。俺は異界探索協会、イズン帝国支部所長のジェフだ。本部から勇者……君の補助を任されている。受ける依頼に関して、先程情報が来たところだ」
職員の連絡を受けて、所長が勇者の相談に参加。
「所長……偉い人ですよね? 私の補助は師匠だけで大丈夫です」
ネスティスは視線を俺から所長へ。そして、所長の協力をキッパリと断る。
俺も所長の方に視線を向けた。軽く睨んだという方が合ってるのか。間違った情報のせいで、爺さんに頼んだ事の修正が必要になった。間に合うのかどうかも分からなかったのもある。
そんな俺を所長は書類で頭を叩いてきた。ここは所長のフォローに回るべきではあるか。
「……所長の話を聞いてくれ。下手すれば、君の相談役から外されてしまうどころか、俺がクビになってしまう。その権限が所長にはあるからな」
所長は一瞬驚い顔をしたが、勇者を納得させる言葉として判断し、すぐに表情を戻した。
「……分かりました。師匠が相談役から外されるのも嫌だから……今回だけですよ」
ネスティスも納得はしてくれたようだけど、所長に向ける目は敵視してる感じだ。嫌われるだけで納得してもらえるなら、所長も結果オーライだろう。
俺は席を所長に譲る事にした。相談室の椅子は相談者と相談役の二つしかない。
ここで一番偉い所長を立たせたままなのもそうだし、所長の片足は義足。無理をさせたら、美人秘書に何を言われるか。
「すまないな。ネスティス君。まずは君が持つ本部の依頼内容と、俺が持つ内容が一致しているかの確認をしたい」
所長は書類を開く。とはいっても、彼女に中身を見せない。彼女が視認した事で、それを言わせないようにしているわけだ。
けど、後ろに立っている俺には見える。それが必然なのか、偶然なのか。
そんな事をするのなら、覗いても構わないのだろ?
「まずは貴女が向かう異界は何処になったのかを聞きたいのだが」
所長はこの前みたいに【盗み聞き】で、俺とネスティスの会話を聞いててもおかしくないが、彼女自身はそのスキルを知らないからな。それを知ったら、所長の印象が余計に悪くなる。
「【廃坑】です。ロダンという場所にあるらしいんだけど、一度も行った事がありません」
彼女も素直に答えるが、俺の時と違って、素っ気ない態度だ。俺の所長に対する言い方が悪かったか?
盗賊ギルドでは仲良くやってると所長は言ってたから、人見知りではないはずなのに……




