クビですか?
⚔
「昨日は酷い目にあったな。体力の減りがヤバいわ。少しでも鍛えておくべきか。だとして、仕事終わりに一人で異界探索は……俺が死ぬ」
朝。筋肉痛に悩まされながら、協会に出勤。爺さんの道具は使わず、骨が折れる事はなかったが、筋肉の負担が凄かった。
下層から中層へ繋がる階段を駆け上がるだけで、次の日にきた筋肉痛に悩まされるなんて。
それだけじゃない。腕はパンパンだし、目も疲れてる。というのも、休憩から遅れてきた事で、美人秘書からの小言は無かったが……
その代わり、残り僅かだった書類が、朝以上の山になっていた。何処からそこまでの書類が増えたのか。
「私を無視して、置いて行った罰です!!」
美人秘書だけじゃなく、フレアも他の職員から書類を貰い、俺の席に置いたのが理由だった。
それを渡す職員も職員だが、遅刻した俺が文句も言えず……
「おはようございます」
協会に入ると、職員達からの挨拶が返ってくる。昨日みたいに、朝一から所長の呼び出しはなし。
「……あれ? 今日の書類がないんだけど……」
俺が仕事が終わっても、協会は開いた状態。その間にも書類は増え、職員それぞれに仕事が分担される。
朝一から書類仕事があるはずなのに、今日は一枚もない。それが不気味だし、嫌な予感がする。
「昨日の休憩から遅れただけで、クビなんて事は……」
「違うわよ。昨日はフレアのせいで、君に大量の書類を押し付けた形になったから。その分、今日は私達がそれを引き受ける事にしたの。それと……フレア達にはすでに説教したから」
昨日、フレアを止めてくれた先輩受付嬢が、俺に声を掛けてきた。
彼女は受付に戻った事で、今回の出来事を後から知ったらしい。俺が帰宅した後、彼女はフレアに説教したようだ。当然、フレアに書類を渡した職員にも。
先輩受付嬢に怒られたフレアはというと……姿が見えない。今日は休みらしく、出勤欄に休のマークが押されている。
異界探索協会は年中無休で、休みは職員が選ぶ事になっている。勿論、協会に支障がない人数は確保された状態にしている。
俺の挨拶に彼女の返事がなかったのも、それが理由だ。誰よりも早く、俺の挨拶に反応するぐらいだからな。
「それと一番の理由は所長の指示。所長が用意した映像の確認を優先させるようにって。書類がゼロなのは、そのため。アカネも納得してるから」
アカネというのは所長の美人秘書の名前だ。勇者関連だと、彼女も分かっているのかもしれない。
「レベル4の異界の映像ね。過去のだけではなく、隣国のレベル4の映像も取り寄せたみたいだわ」
念には念を。隣国であれば、行けない距離でもない。帝国が隣国に恩を売ろうする事も考慮しての事か。そう思う、何かしらあるのだろう。
「分かりました。……【屋敷】の映像がないのは?」
「それは昨日で攻略されたからね。ハンターが報告に来たから。対応したのも私。間違いないわ」
勇者が行く異界で【屋敷】の可能性は消えた。流石に攻略直後の異界に行かせるなんて事を本部はさせない。
勇者の活躍がまるでないからだ。それを映像に流すわけにもいかないだろう。
映像の中で多いのは【池】だ。所長も【池】の可能性が一番高いと踏んだのか。




