拒否されました
「……【道化師】様。お待たせしました。所長がお待ちです。所長室まで案内させて頂きます。こちらへ」
先輩受付嬢が下がった後、すぐに美人秘書が姿を見せた。
【黒猫】の正体が美人秘書だったら、次の日には仕事を再開してる事になる。
俺の場合、仕事は明日から。【廃坑】探索が二日以上かかる可能性もあっての事だ。
それは【黒猫】も同じはずだが、彼女の事だから、所長の負担を減らすために……って事かもしれない。
声や話し方を少し変えてるのも、正体がバレないようにしている節がある。互いにそれには触れないようにしておこう。
あっちもレイニーが【道化師】と疑っている事もある。
【道化師】に対して、キツイ目で睨んで来るのは、そういう事だろう。
俺が美人秘書の近付くと、すぐに奥へと入っていく。俺が働いている後方からではなく、別ルートから。
さっきの先輩受付嬢とフレアのやり取りを見てたのかもしれない。
あちら側には美人秘書の部屋とか、物置、休憩室はあったりと、協会内の構造は把握している。
「……【殺戮】様がいないようですが?」
美人秘書と俺がフロアを離れると、彼女は質問を投げてきた。
【殺戮】は【無法者】の拠点にいたにはいた。俺もそれに付き合わされ、魔法の【修正】をさせられたからな。
それだけじゃなく、三食の食事、寝る為の抱き枕代わりになるとか……色々とだ。
俺がレイニーとしてじゃなく、【道化師】として所長に呼ばれたのも、【殺戮】も所長室に呼ぶため。
「来ない。アイツ等は自由人だからな。さっさと旅立って行ったよ」
俺が朝起きた時には姿を消していた。朝食用に置いてた作り置きも全部持ち逃げされていたからな。
ゴブリン顔と同化した虫型は放置。いらないと言われた。【死天使】用に置くとしても、銀の箱内じゃないと腐ってしまう。
最悪、所長に渡しておくか。ジェフなら本部に教える事はない……【黒猫】からも逆パターンのを渡されているはずだ。
「そうですか」
美人秘書はその一言。だが、若干ホッとして顔……というか、雰囲気が出ていた。
【殺戮】が苦手というのもあるし、身バレを警戒している。ミザリーは美人秘書が【黒猫】と気付かない自信はあるんだが。
それでも会ったら、会ったで疲れるのかもしれない。
「所長。【道化師】様をお連れしました」
所長室前に到着。美人秘書はドアをノックして、俺が到着したのを伝える。
「分かった。入って貰ってくれ」
その言葉に美人秘書はドアを開けて、俺に入るよう促す。
美人秘書は部屋には入らないようだが……
「アカネも同席してくれても」
「結構です。他の仕事が残っているので」
俺をその場に残して、颯爽と立ち去っていく。
所長の言葉を拒否。ジェフが余計な一言で、【黒猫】=美人秘書とバラす可能性とあるから。
本当に仕事が貯まってるのもあるかもだ。それは人の事は言えない。
下手な事を言えば、美人秘書が大量の仕事を寄越してくる事もある。




