【ネム】
「所長の……」
「所長は元盗賊ギルドマスターだ。アイツも流石に悲しむぞ」
「顔を覚えているだけで十分だと思うんだけど、そういう事ね。ハンターの証に関して、所長には何も聞いてないわ。【犠牲】に頼まれたのよ」
【殺戮】に顔を覚えられているだけ、所長はマシな方だと思っておこう。そんな事よりも、【犠牲】に頼まれた事が気になる。
【無法者】リーダーである俺が何も聞かされてない……男同士で、腹の中を割って話せる唯一の……と思っていたんだが!!
「あっ……【犠牲】とは偶然会っただけよ。他のメンバーにも、会った時に頼む程度の事だから」
俺がしょんぼりと肩を下ろした風に見えたのか、【殺戮】はフォローを入れようとしてくれてる。そんな事をするのは俺に対してぐらいか……
「そ、そうなのか。俺がいる場所は【犠牲】も分かってるのに」
「だからというのもあるでしょ」
俺だけだと異界探索は無理なのは重々承知だし、面倒臭がるけど、【殺戮】達に頼むのであれば、協力ぐらいはするぞ。
それとも別の理由か?
【犠牲】が【殺戮】に頼み事したのは何か。
俺に対しての事じゃない。【殺戮】は俺に魔法を【修正】して貰うために来た……だけじゃなく、その頼み事に該当したから。
頼み事にはハンターの証、銀の箱が関係している。コング兄弟達の証はどうなったのか。
「用は済んだし、帰るわよ。勇者と【黒猫】も緊張の糸が切れて、【ネム】いはずよ。私が【異界】に入った時には夜になってたから」
俺は【殺戮】が話の中に魔法を組み入れている事に気付いた。
【ネム】は睡眠魔法。ネスティスと【黒猫】の名前を出した事で、対象を選んでいる。
ネスティスは【ネム】に抵抗出来ず、眠りについた。骨折、疲れ、深夜帯に入ったのもあるだろう。銀の箱も光が消えて、映像を止めている。
だが、【黒猫】は効いてない。ネスティスが睡眠で倒れそうなところを助けた。
【殺戮】の魔力に気付いたのか。睡眠に耐性があるのか。
【殺戮】は二人に聞かれたくない話を俺にするつもりだったのかもしれない。
「どういうつもりかしら。私達を置き去りするのは流石にないとして、聞かれたくない話をするわけ?」
折角、誤解が解けたはずが、【黒猫】に睡眠魔法を向けた事で、再度怪しまれてしまってる。
しかも、俺にまで被害が及ばないか?
「それに私達が受けた依頼は終わってないわ。コング兄弟達以外にも二人いるの。生死を調べる必要があるわ」
【黒猫】の言う通り、【殺戮】の目的は達成かもしれないが、ネスティスが本部から受けた依頼は終わってない。
残った二人に関する情報を入手しないと駄目だ。




