全焼
「ひ、卑怯だぞ!! こんな事は」
「馬鹿でしょ。貴方も人の事言えないから。【殺戮】の魔法を防ぎきりなさい」
【黒猫】もネスティスを抱えて、俺や【殺戮】がいる方へ。
ネスティスが【アイスブレス】を準備していたのも、ドンドンの性格を考えての事だったのかもしれない。もしくは、【黒猫】の指示だったのか。
俺は何も指示をしてない。【殺戮】は敢えて、最後の部分を詠唱を遅らせていた。
ドンドンが最接近した時、【殺戮】は【ファイアボール】を放つつもりだったからだ。
わざと妨害するように詠唱を遅くしていた節がある。格闘家のプライドを捨てさせるために。
ミザリーはそういう性格だ。
とはいえ、後でネスティスを褒めてやらないと。あの状況で【アイスブレス】を使い、ドンドンの邪魔をするなんて、なかなか出来る事じゃない。
「【ファイアボール】!!」
【殺戮】は最後の一文。【ファイアボール】と言葉にしたと同時に、幻の竜の口から、牙の杖から、炎の玉が放たれる。
「この……何とか丸まって、防御だけでも」
ドンドンは体を丸めて、上半身、人間の部分だけでも守ろうと動いたが、それが出来ていない。
いつの間にか百足の顔が再生していて、丸くなるのを拒否していた。
「何!? 再生したのか!! だが、そんな事をすれば、私達が死ぬ事になるんだぞ!!」
それだけでなく、逆にドンドンの体を動かしているようだ。
百足がしたドンドンの体を操り、させた行動は、まさかの【ファイアボール】を受け止める事。
ドンドンの後ろには壊れているコアもあるが、異形の卵が壁に散りばめられたまま。
百足はそれを守ろうとしているのか。
「やめろやめろやめろやめろやめろ……」
ドンドンの両腕が【ファイアボール】を触れる。
【ファイアボール】はドンドン全てを呑み込まず、押し込んでいるだけ。
百足がドンドンの両腕を再生させ続けているのか。
それも彼の体が卵のある壁まで来て、背中に触れた時点で終わり。逃げ場がなく、炎の玉に呑み込まれていく。
それだけでは終わらない。
【殺戮】は壁にある卵を全て壊すのも含めて、【ファイアボール】を放っている。
壁が破壊されると共に、卵と繋がっていた管にも火が付き、燃え広がっていく。
「終わりね」
【殺戮】の【ファイアボール】は卵を全部燃やしただけでなく、大きな丸い跡を残した。そこにはドンドンと百足の体は跡形もなく消えている。
ただし、【ファイアボール】に壊れたコアと台座も巻き込まれたはずが、変化はまるでなし。
あれでも完全に消滅される事は無理という事だ。




