【ファイアボール】
「な……な、何だそれは!! 高レベルの……別物の魔法だぞ。【ファイアボール】なんて認めるわけには」
ドンドンの表情が凍りついた。【真空正拳突き】の二十連を更に上回る数の【ファイアボール】が出現して、それを迎撃していく。
そして、ドンドンが打ち終わる頃、残っていた【ファイアボール】が異形の小さな足に襲い掛かる。ドンドンの上半身には攻撃していない
「【ファイアボール】で間違いないわよ。じゃなければ、詠唱短縮でもここまで出来ないわ。マスターした後、覚え直しただけよ」
「覚え直しだと!? そんな事が出来るわけがない。それをする意味もないだろ」
ドンドンは足を消されたところで、痛みを感じてないようだが、【殺戮】に対しての恐怖が上回っているのかもしれない。
「一つの魔法で使い分けが出来るのよ。スキル、魔法の内容は固定され、同じ事しか出来ない。威力、数、MPの調整は出来てもおかしくないはずなのに無理になっている。それを一度マスターした後に【修正】すれば、一から覚え直しになるのよ。マスターすれば、その魔法の内容が残ったままでね」
【殺戮】の言う通り、これは俺が【修正】する事で出来るようになった。
アクティブスキルがパッシブスキルになるように、魔法もマスターする事で、詠唱や威力の向上、更には固定化される。
固定化は内容がそのままで、変化する事が出来ない。
マスターするのも、魔法の昇華をしなかった場合のみ。昇華すれば、一から覚え直しになる。
これを【修正】して、内容を変えた場合、昇華状態と同じになり、マスターした魔法を残したまままで、昇華と同じ事が可能に。
それを【殺戮】は昇華された魔法をマスターして、更に違う内容で繰り返す。
【ファイアボール】に関しては、種類が十以上。
それを使い分ける方法が手の形。【殺戮】も詠唱を変える方法を最初は使っていたが、手や指を利用する事を考えついた。
これにより、詠唱を短縮に成功。その時は杖を使わないようにしている。
これをネスティスと【黒猫】に知られたわけだが、【修正】を使った時点で同じだ。それは後で考えよう。
「二回も先手を上げたのだから、次は私の番よね? 本来の【ファイアボール】を使ってあげるわ。何が来るのかが分かっているのだから、防ぎきりなさいよ。……格闘家ならね」
【殺戮】は格闘家としてのプライドを利用して、ドンドンの拒否権を奪う。弟達にも格闘家として、戦わせた結果だろう。
【殺戮】は腰から杖を取り出す。彼女の腰には小さな杖……らしき物が幾つも用意されている。
今、彼女が手にしたのは赤黒い牙。【殺戮】専用、火属性を強化するための魔導具。
腰に巻いてあるのは各属性を強化するための装備。俺が知らないのも増えている。




