レベル4の異界
「勇者……彼女の事だな。魔法ギルドで修業してたのも、お前の差し金か。……俺の事は何も話してないよな」
ネスティスは魔法ギルドで修業していた。近くにあるものだから、爺さんも勇者の姿を見ていてもおかしくはないんだが……
「爺さんの事は何も話してないぞ。余計な事をして、正体がバレたくないからな。協会内で俺が【道化師】と知ってるのは所長……【影】だけだ」
「そうなのか? 彼女がたまに家を覗くような姿を見掛けたからな」
「そんな話は一度もネスティスから聞いてないぞ。一番実力がある職人だと雰囲気で分かったんじゃないか? それか別の職人の仕事姿も見てたか」
ネスティスが爺さんの仕事を見ようとしてたのは初耳だ。俺が色々とやらせるつもりだと踏んで、先に勉強しておくつもりだったのかもしれないか。
「それは彼女には言わなくていいからな。単に興味があっただけなのかもしれない。お前とのよしみだ。引き受けてやるよ。勿論、お代は頂くぞ」
「感謝する。当然、金は払うし、礼にこれを受け取ってくれ」
俺は用意した酒を爺さんに渡す。
「分かってるな。ここだとキツイ匂いの酒じゃないと、楽しめない。安酒だと楽に酔う事も出来る。景気づけの一杯だ」
爺さんはハンマーから手を離し、貰って早々に酒の一本を開ける。
「不味い!! 不味いが、これが良い。それで……どの異界に行くのか分かってるのか? 装備を整えるのもそれ次第だぞ。それに」
「これだろ。勇者の身体能力、スキル等も書いてある。本当は他人の情報を渡したら駄目なんだけどな。今、彼女は盗賊ギルドで危険察知系のスキルを習得しようとしてるから、少しの誤差は出るとは思うぞ」
職人にはその人物に合った装備を作る。勿論、それは本人から情報を得るしかない。
だが、俺はそれを知る事が出来る。協会で仕事をしてるのもあるが、【閲覧】というスキルもある。
【閲覧】はその人物を観察する事で、能力を読み取る事が可能。それは何度も見る事で情報は更新されていく。そして、どの能力が伸びやすいかも分かるぐらいにはなる。
ネスティスは先日の相談時に情報は更新されたが、彼女の成長速度を考えると、また違ってくるはず。
「勇者が向かう異界はレベル4というだけで、決まってはないらしい。ただし、帝国内の異界なのは間違いないと思う。国……本部が依頼を出すらしいからな」
所長はまだ分からないというが、予想は出来る。依頼を考えると、帝国内である事は間違いない。他国の依頼があったとして、先に自国の依頼を勇者にさせるはずだ。
「帝国内にあるレベル4の異界は今のところ三つだったか?」
「認定されているのはそう。この三つのどれかになるんだろうけど、予想だと【池】だと思ってる」
爺さんが言ってるように、帝国内にあるレベル4の異界は三つ。【池】【旧道】【屋敷】だ。
「【旧道】と【屋敷】はハンター達が攻略中だ。そんな中、美味しいところだけ、勇者に渡す事はしないだろう。流石にハンター達の印象を悪くするはずだ」
ハンター達が【旧道】と【屋敷】の攻略を進めているのは、協会で把握している。【屋敷】は依頼も出ていて、コア破壊直前まで進んでいる。そんな中、勇者に手柄を横取りさせるなんて事になれば、勇者を敵視するハンターが出てくる。
「それに勇者の初探索を映像に流すのなら、最初からの方が良いはず。だとすれば、【池】になるんだよ。そろそろ、コア修復が終わると考えているんだろうな」
異界は攻略、コアが破壊されても、時間の経過と共に修復する。修復すれば、異界化が進み、異形も増加が進む。
コア修復が完了するまでの間も、異形が出現する。それは完了が近い事を意味している。【池】もその段階に入っている。




