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時間稼ぎ

「……俺が言う事じゃないが、お前は弟達を助ける事が出来たんじゃないのか? 一度だけじゃなく、二度も守ったんだろ?」


 アイアンを切り離したところで、【黒猫】の【分身】は解けた。【分身】のスキルの反動なのか、息切れを起こしている。


 自身の体に【キュア】を使おうにも、詠唱自体ままならない。


 ネスティスもまだ立ち上がれずにいる。


 今、俺がしないと駄目なのは時間稼ぎだ。


「それにお前も弟に一度助けてもらった側だぞ。弟が見てなかったら、【剣刃】で終わってたはずだ」


「黙れ!! 黙れ黙れ黙れ!! 私はおかしくなっているんだ。こんな姿にした奴が悪い。私は悪くない。格闘家として一対一に挑むのは当然。私は悪くない」


 ドンドンは思考が、感情が混乱しているかのように、言葉を荒げる。


 弟達が死んだ事により、異形化が進行した可能性もある。百足の異形を殺した時点で早めたのか。


「一対一でも、お前はアドバイスをした。そのアドバイス自体が足枷になっていたはずだ」


 ドンドンを【開眼】で見る。


 ドンドンは【全体】に【咆哮】をする。

 触手は【道化師】を標的に選んだ。

 触手は【道化師】を標的に選んだ。


 デンデンとアイアンを繋いでいた部分が、触手に変更され、ドンドンの意思で動くようになっている。


 ネスティスが攻撃を受けた時点で、それは予想していた。


 弟達を倒したところで、攻撃回数は減らない。逆にドンドンが二つを操れる事で、齟齬が生まれなくなってしまった。


 この三つの行動を【修正】する事は出来ない。


 今、ネスティスと【黒猫】に攻撃を避ける術はない。まして、触手の攻撃だけでなく、ドンドンの【咆哮】もある。


【咆哮】を【全体】じゃなく、【道化師】にする事も出来るが、耐性があっても無理。耐えられない。


 その後の触手を受けて、俺は死んでしまう。


 触手一本の攻撃なら、奇跡的に回避出来るかもしれないが、二本目は厳し過ぎる。【咆哮】が加われば、絶望だ。


「ここから動くなよ。ドンドンは【咆哮】を放った後、デンデン達が繋がっていた体で俺を攻撃するつもりだ」


 俺はネスティスから距離を取る。


 彼女を触手からの攻撃に巻き込むわけにもいかない。


【黒猫】も俺が動き出した事に反応し、触手の一つを受け持とうとしている。


 俺は腕でバツ印を作った後、耳を塞ぐ仕草をした。それだけで【咆哮】による硬直はましになる。


【黒猫】とドンドンの力の差次第では無効化まではいかないが、数秒で回復するかもしれない。


 だからといって、【黒猫】が触手からの攻撃に防御が間に合うわけでもない。


「黙れ!! 一対一で、小煩いお前から殺してやる」


『黙れ!!』という叫びに、体が震える。その言葉が【咆哮】になり、二本の触手が俺に襲い掛かる。

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