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【分身】

「おう?」


 アイアンの動きが止まっただけでなく、首を傾げた。


 その理由は分かる。腹を突き破ったのにも関わらず、血が吹き出さない。そもそも、その感触がないからだろう。


「ぐけっ!!」


 その代わり、アイアン自身の背中に痛みが走る。後ろを見るが、誰もいない。


「ふへ!?」


 視線を前に戻すと、倒したはずの【黒猫】の姿が消えている。


「何処を見ている!! ……これは……幻覚か!? アイアンの体を通して、私も……いや!!」


 ドンドンも【黒猫】の動きを追えていたようだが、ここからは把握する事が出来なくなる。


 奴は【ポイズンダガー】の効果で【幻惑】に掛けられていると感じたが、その考えをすぐに放棄した。


「【分身】……けど、それを【黒猫】さんは選ばなかったんじゃ……【修正】したのはスキル制限の方だからだ」


 ネスティスの言う通り。【修正】で【廃坑】に使えるスキルを【ポイズンダガー】から【分身】に入れ替えた。【分身】の内容には手を出してない。


 彼女にとっての切り札。【ポイズンダガー】も残したかったが、ネスティスの【剣刃】を優先した事で、時間が足りなかった。


 前回使用したスキルが一番に表示されるのが理由だ。


「【分身】のスキルだ!! 本体は一つしかない。速さに惑わされるな。どちらかを選べば……」


 ドンドンは幻惑ではなく、【分身】のスキルだと見切った。


【黒猫】の【分身】により、その姿が二人に見えるのなら、二分の一の確率。いずれは攻撃が当たるはずだと考えるのだろうが、彼女の【分身】は二人に留まらない。三人、四人、五人まで増える。


 簡単に捉える事は出来ない。


「我慢比べだ!! 【分身】の弱点は動き続けなければならない事だ。耐え続ければ、奴は動けなくなる」


 ドンドンは【分身】対策を切り替えた。【分身】は高速移動により発生するもので、動き続ける必要があるのは間違いない。


 五人の中から正解を見つけるよりも、耐え続ける事を指示。【黒猫】の持つナイフでは、アイアンの体に深手を負わせれてないからだろう。


 アイアンは我慢比べをするため、体をダンゴーンのように丸め、防御に徹する。


「残念ね。貴方のその指示は間違ってるわ」


 ドンドンはデンデン時と似た指示を出した。我慢比べともなれば、アイアンも防御体勢になる。


 しかも、体を丸める事で首を斬られる事はないが、周りを見る事も出来ない。


 つまり、連結部が無防備な状態に。デンデンの時の二の舞になってしまっている。


「……悪いのは私か。いや!! 馬鹿な弟達が駄目なだけだ」


【黒猫】は【分身】による高速攻撃で、アイアンとドンドンの連結部を切り裂いた。

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