不意討ち
ネスティスはデンデンが防御のために上げた腕を踏み台にして、デンデンの体と百足の部分の繋がりを切り離した。
「なっ!?」
ドンドンも忘れていた。いや、ネスティスが気付かせなかったのもある。
ドンドン自身、百足から体を奪った事で過信していた事もあるのだが……
ネスティスが放った【剣刃】はドンドンとの連結部ではなく、デンデンの体を狙っていた。
上からの……ジャンプしての攻撃もデンデンの体に届く位置取り。下から懐へ飛び込み、そこからの斬り上げだった場合、狙いを読まれる可能性も考慮していた。
これはネスティスの行動を【修正】したわけじゃなく、彼女自身が考えた事。
【修正】も一から十まで全てを変更する事は出来ない。
「ゴメンなさい」
デンデンの体は地面に落ちた。受け身も取る事をしなかったのは、糸が切れた操り人形のように、意識が無くなったのか。
ネスティスはそれでも確実にデンデンのトドメを刺すため、首を切った。
弟達の出現時は顔だけ。復活する可能性を考えたら、そこを潰すのは当然。
すでに事切れている事は、彼女も分かってないからだ。
ただし、ゴブリンとは違い、頭を下げるようにしたのは元人間だからだろう。
「……ネスティス!!」
俺は二人の動きを見てしまい、ドンドンから目を離してしまった。
とはいえ、奴は一歩も動いていない。
ネスティスが斬った片側。ドンドンの体と繋がっている部分。
それが鞭のようにネスティスとデンデンの死体を振り払った。
「お前!! 邪魔はしないんじゃなかったのか!!」
「戦闘は終わっていただろ? 私は二度助けたのにこの始末。三度目はない。弱い者は必要ないからな。アイアンの邪魔をされても困る」
ドンドンが弟の死体ごとネスティスに攻撃したのは、弱い弟を見捨てたからだ。
一度切り離されてから、繋がらないのを隠すためなのか。本当にそう思ってるのかも分からない。
【黒猫】とアイアンの戦闘を邪魔されたくないのは事実だろうが。
俺はネスティスの方へ駆け寄る。
ドンドンはチラ見をしただけで、それを妨害しない。今は興味があるのは【黒猫】とアイアンの戦闘。だが、俺に対する警戒だけは解いていない。
「大丈夫か!! ポーションをまずは飲んで……傷薬も使うぞ」
「……はい。おじいちゃんの篭手が守ってくれて。腕を折るぐらいで済みました。後……弟の死体が盾にもなってくれて」
俺はネスティスにポーションを飲ませた。じいさんが用意した篭手が機能したのもあるが、振り払いに最初に当たったのが弟の死体で、威力が軽減されたらしい。
とはいえ、篭手を装備していた左腕は折れ、体のボロボロだ。傷薬も骨折は治せず、痛み止め程度に終わってしまう。
弟の死体がなければ、死んでいた可能性が高い。
ただ……俺が見た時はネスティスの方が攻撃側に寄っていた気はする。
頭になったデンデンがネスティスを庇ったのか?




