一対一
「ドンドンは本当に弟達と二人をぶつけるつもりだ」
「分かってるわよ。奴が言葉にしてるんだから。だけど、何故すぐに攻撃を仕掛けこないわけ」
弟達も【黒猫】とネスティスを標的にしているが、すぐに攻撃を仕掛けるわけでもない。
「弟達の進化した力を見たいからだ。そのためにはお前達も万全な状態でなければならない。硬直が解けるまで……いや、ポーションを飲むまでは許す。格闘家としての性だ。弟達の望みでもある」
ドンドンはネスティスの言葉が分かるまでの知能を取り戻したのか、理由を答える。
格闘家として、コング兄弟は万全な状態での一対一を望んでいるらしい。
俺自身が攻撃手段を持ち得ないわけで、【道化師】の弱点になってしまう。
「お前が邪魔をする事は許さない。妨害する能力を持っているんだろ? だとすれば、お前は私を見続けなければならないわけだ」
俺が相手の動きを変化させている事に、ドンドンは気付いたらしい。ネスティスから【黒猫】へ標的を変更した時の違和感を感じ取っていたんだろう。
ドンドンの言う通り、二人が戦闘を開始すれば、俺は奴を見続ける必要がある。
二人が戦闘している間に、ドンドンが待機し続けるとも限らない。
それを見逃せば、全滅する可能性だって出てくる。
つまり、ネスティスと【黒猫】が弟を各個撃破する必要がある。
それも撃破直前でドンドンが邪魔をすれば、俺が妨害するしかない。
その時は標的を俺にする必要が出てくるわけだが……
その前に問題がある。
ドンドンの洞察力が凄い事だ。下手すれば、ネスティスの【剣刃】や【黒猫】の【ポイズンナイフ】を見ている事で、弟達に対応策を教える可能性が十分ある。
ネスティスには【アイスブレス】があるが、戦闘中に使えるかどうか。詠唱に噛んでしまった場合、失敗扱いになる。
【黒猫】も【廃坑】のスキル制限により、攻撃スキルを【ポイズンナイフ】しか選んでいない。
二人共、弟相手にスキルなしで挑むしかなくなっている……
俺がいなければ……だ!!
戦闘開始と共に邪魔するのは許されないが、準備中であれば、文句は言えない。
ドンドンは俺のスキルを妨害と思っているのなら、付け入る隙がある。
「……【黒猫】とネスティスはスキルの確認をしてくれ。奴等の言う通り、万全な状態で挑むんだ」
「その通りだが……強化はされてないな。回復を早めるだけなら、許してやるぞ」
ドンドンは俺が二人に強化魔法を使用したと疑ったのは、【修正】のスキルを理解してない証拠だ。回復魔法と勘違いしたのも、魔力を感じ取る事も出来ないからだろう。
「……分かりました。やってみます」
「なるほどね。【無法者】が多くの異界攻略が出来たの納得だわ」
二人も俺の言う通りにした事で、何が起きたのかを理解した。




