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筋肉爺さん

「爺さん!! 頼みがあって来たぞ」


 職人区の一番奥。俺は爺さんの店に到着して、中に入る。いや、店というよりも家だな。


 一階に商品が置かれているわけでもなく、住居スペースになっていて、地下が職人の工房になっている。


 ドアが開いてるって事は、目を覚ましている証拠だ。この時間は住居で休んでいるはずだが、下の工房にいる可能性もゼロじゃない。


 少し声を大きくして、呼び掛ける。すると、ガタゴトと誰かが移動する音が、一階奥から聴こえてきた。


「誰が爺だ!! 俺はまだ五十代のバリバリ現役だぞ……おっ!! 職人殺しの【道化師】か!? 全然顔を見せなくなりやがって。……いつぶりだ?」


 奥から出てきたのは筋肉ムキムキの男。銀髪角刈り、無精髭を生やし、サングラスをかけた怪しい風貌ではある。


「周りに聞こえないにしても、その呼び方は止めてくれよ。他の職人は気を使って、呼ばないようにしてくれてのに……そっちも相変わらずみたいだな」


 爺さん以外の職人に【道化師】とバレたのも、これも理由の一つだ。近くに誰かがいた時は気を使う時もあるが、基本的な呼び方は【道化師】のまま。


 俺が爺さん呼びをする理由の一つがそれだ。注意しても、直す気がない。年齢の差もあるし、言い争う仲であり、気が知れているというのもある。


「俺が来るのは一年振りくらいか? ……俺だと分かったんだから、ハンマーを下ろしてくれ」


 爺扱いした相手を追い返そうとしたのか、叩き出そうとしたんだろう。腕と同じ長さのハンマーを片手で持っている。


「まだそんなものか? お前達が訪ねてくる事がなかったから、無理難題……面倒事がなさ過ぎてな……来てるのはお前だけか? 【殺戮】も魔法ギルドに顔を見せてないようだからな」


 俺達は爺さんには無理難題の装備を作って貰った事がある。アイツ等は容赦なく、色んな事を要求したからな。


 しかも、気に食わなかった場合……爺さんのプライドを折った事もあった。


「アイツ等は帝国を離れて、各自で違う国の異界に修業中。この帝都にはいないんだよ」


「そうか。五月蝿い奴等がいないのも寂しいものだが……お前は行かなかったのか?」


「いや、俺には俺のやり方があるわけで。俺の場合、ソロだと全然だから……そこは知ってるだろ」


 爺さんは俺の職業も知ってるし、能力もだ。その能力があったからこそ、爺さんは俺達に興味を示して、今に至るわけだ。


「ハッハッハ!! 確かにそうだ。お前一人ではどうにもならないな。だったら、一体何の用だ? 【無法者】メンバーの装備じゃないんだろ。お前自身、ろくな装備が出来るわけでもない。異界に行かないのなら尚更だ」


 それはそうだ。【無法者】と無関係なら、何をしにきたという話になる。


「それは今から説明する。こういう時に頼りになるのは爺さんだけだからな」


 俺は今回の出来事を説明していく。異界探索協会の臨時職員になった事や、勇者の相談役になった事。


 俺がのんびりしていたせいで、勇者の異界初挑戦がレベル4になってしまった事も。

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