新スキル
彼女は弟の噛み付きを回避を続けている。刀を無闇に振り回す事をしてない。
弟も全身を使って、ネスティスを締め上げる動きを選んでない。
それをすれば、刀を自ら受けに行く事と同じだと分かっている。そういう危険を察知する考えは残っているんだろう。
ただし、一枚上手なのはネスティスの方だ。口元が動いていて、数を数えているように見える。
カウンターを取るタイミングを窺ってるんだ。
弟の胴体は【黒猫】のナイフでも突き刺さる。ダメージはないに等しかったが、ネスティスの刀も通るのは間違いない。
なら、狙うのは一刀両断。弟の顔と体を分断。伸びきった体では、ドンドンも身代わりにはなれない。
ネスティスが動きを止め、刀を構えた。
弟はネスティスを通り過ぎ、背中への攻撃に。
普通なら相手の方へ振り返るのだが、彼女はそれをしない。目の前に長い体はあるからだ。
一撃を受ける覚悟で、それを斬る。弟の顔は噛み付くのみ。呑み込まれるとしても、その先に行く事はない。
「ネスティス!!」
俺の叫びにネスティスは反応して、横に飛んだ。
直後、ネスティスの体は一時的に硬直する事になる。
ドンドンが叫び、それが【威嚇】となった。
【威嚇】は自身よりも弱い相手を、竦み上がらせ、動きを止める。
ゴブリンがネスティスに使って、失敗したスキルだ。
それをドンドンが使えば、ネスティスは動けなくなる。
つまり、ネスティスはドンドンよりも下だ。
【黒猫】も同じ。ハンターランクは彼女の方が上のはずだが、異形と同化した事により、上に行かれている。
粘着液を受けた弟が後退するのを、【黒猫】が何もしないわけがなく、両手のナイフで切断を試みようと、突撃しようとした。
それをドンドンは止めようとした。
ネスティスと【黒猫】のタイミングが重なってしまった事による失敗だ。これはどうしようもない事だ。
いや……ドンドンが【威嚇】を使ったのは別の理由か?
ネスティスを襲っていた弟も攻撃を止め、引き上げていく。
一度攻撃を避けられても、直後にネスティスは硬直。噛み切る事も、呑み込むチャンスでもあったはず。
「ドンドン達に何が起きたんだ? ……前の行動を見る事が出来れば……っ!!」
頭に……脳に痛みが走る。何度も経験した事がある。
新しいスキルを覚える前兆。職業やスキル、魔法によって、覚え方は違う。
職業編集者……俺の場合は脳に直接痛みが走る。そこで完全に習得するわけじゃなく、一回だけ。
数度起き、感覚を覚える事が習得条件。こんな時に起きるのは必要だと感じからだ。




