表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/231

悪臭の職人区

「ここは……相変わらずだな。今は丁寧に説明書きもあるのか」


 体勢を整えて、職人区へと足を進めていく。滑り台や階段のゴール地点から職人区ではあるが、入口はほんの少し先になっている。


 階段を最後まで降った後、その前には看板が建てられていた。俺が最後に行った時にはなかったが……


「そこは階段の降りた後じゃなくて、上に設置すべきだろ。優しいようで、嫌がらせでもあるな」


 看板に書かれている内容はこうだ。


【この先職人区。職人達による仕事により、様々な臭いが立ち込めていて、気持ち悪くなる場合があります。倒れても責任はとりません。対策は各自でお願いします】


 臭い対策。すでに悪臭に近い香りがここまで漂ってきている。


 職人には鍛冶士、調合士、それに加えての魔法ギルドもあり、薬草は勿論だが、色んな物に火を入れたりする。未知な素材を試すにしても、何が起きるかも分からない。


 ある意味で危険な区だ。下層に置かれる理由も納得出来る程に。


 初見でここに来たら、臭い対策のマスクか鼻の穴を詰める道具を買いに戻るしかない。


 それでも中に入れば、対策の道具を売ってはくれるんだが……職人達はその相手を良くは思わない。


 職人達の心を開く。職人から直接交渉可能な常連になるためには、臭い対策をしては駄目だったりする。


 職人達はその悪臭の中で常に仕事をしているからで、臭いを嫌がってはいけないのだ。


「それにしても……前よりも酷くなってるぞ。魔力酔いにもなりそうだし、毒状態になりかねないぞ」


 異界も増え、そこにある宝を研究し、素材として使用。以前に比べて、臭いが常に変化している。異界化してなくても、異界寄りになっているんじゃないか?


 ある意味、ネスティスが魔法ギルドで修業したのも、異界の空気に慣れやすくしてくれたかもしれない。


「おっ!! レイニーじゃないか。久し振りだな。再始動するのか?」


 俺は職人区に足を踏み入れると、すぐに一人の職人が声を掛けてくる。


 職人区の職人の何人かは俺が【道化師】である事を知っている。


 常連になるためには、臭い対策をしてはならない。となったら、素顔を晒すしか方法がない。


 けど、【道化師】という二つ名じゃなく、名前を呼ぶ事で正体がバレないようにしてくれている。


「違う違う。別件だよ。爺さんはまだ健在か?」


「爺じゃなくて、ジジさんな。そんな呼び方出来るのは常連のお前達ぐらいだぞ」


 俺が向かおうとしてる店……会おうとしてるのはジジ。俺が知る中で一番の職人だ。武器や防具、装飾品の性能、効果をきちんと分析し、力を引き出せるようにしてくれるのは、彼だけだと思ってる。


「逆に常連になれたのも、お前達だけだな。……本当によくなれたよな。職人の俺達にもそこまで気を許してないのに」


「話はまた今度。仕事の休憩時間に来てるんだ」


 仕事終わりに来る事も考えたけど、職人はいつ活動しているか分からない。退勤時間以降には閉まってる可能性もある。


 彼が主に仕事をしているのは夜。工房に引き篭もってしまう。引き篭もるまでに会う必要があるわけだ。


「そうなのか。たまには俺達にも仕事を頼んでくれよ。勿論、金は取るけどな」


 職人は俺から離れ、仕事場に戻っていく。


 俺も目当ての場所に行く中、手を振る職人がチラホラ。【道化師】としてではなく、爺の常連のなれた事で、顔を覚えられたのもある。


 途中で魔法ギルドはあるけど……行かない。


 勇者を紹介をしたのが俺だとは知らないはず。


 それに……【殺戮】も魔法ギルドの一員ではあるわけで、迷惑をどれだけ掛けてるか。一時、【無法者】のリーダーだからって、どれだけの苦情を聞かされたか。


 出来れば通りたくない場所ではあるが、仕方ない。入口周辺にギルドメンバーらしき奴がいないから、今のうちではある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ