ドンドン
「……それはないわね。というか、おかしな状況よ。嫌な予感しかしないわ」
【黒猫】はそれを否定する。コアキーパーが救助者を追いかけている。全員が人の声が聴こえたのは聴いたはずなのにだ。
「【気配感知】を使ってるんだけど、移動しているのは一つだけ。それを考えると……」
コアキーパーから逃げている救助者がいた場合、【気配感知】で感じ取れるのは二つ、もしくは三つあるはず。
「コアキーパーが人の言葉を話せるんですか!!」
コアキーパーだけじゃなく、人の言葉を話す異形とは一度も会った事がない。
「弟達よ!! 何処だ!! 返事をしてくれ」
コアキーパーが近付いてくる事で、声もハッキリと聴こえてくる。
その声の内容に、俺の当たって欲しくない予想が的中していた事が分かる。【黒猫】も先に感じ取ったんだろう。
ゴブリンではなく、ハンターと異形の同化。
コアキーパーは弟達を探している。つまり、この声はハンターランク5のドンドン。
ドンドンとコアキーパーが同化している。しかも、ドンドンの意識が少し残っている形だ。それも弟に関してだけなのかもしれない。
でなければ、自身の体に違和感があるはずであり、コアキーパーとなった体で弟達を探せるはずもない。
「確認する必要がある。本当に彼なのかどうか」
弟達の生死を知らないのは、ドンドンが他を逃した可能性がある。そして、同化の実験道具にされた。つまり、一度は死んだのか、瀕死の状態になったのだろう。
【廃坑】にいるのは俺達を含めて五人。コアキーパーがドンドンであれば、数に入れていいのか。
一度死んでいるのなら、消えていてもおかしくない。
コアキーパーが俺達が隠れている近道を通り過ぎると、俺達は声を押し殺した。
最初に見えたのはドンドンの姿。
俺やネスティスが見た写真と見た目は変わらない。だが、思っていたよりも大きい。
それは異形の体に適応したからなのか。
ドンドンの姿であるのは上半身のみ。その下は芋虫というよりも、百足。
下半身部分の百足型は長さがあり、通路の半分以上を埋めている。それも息を吸うかのように膨張し、吐き出す。その時に液が流れ、滑りを良くして移動。無数の足はあるが、そこまで機能はしてないようだ。
あの大きさからして、コアキーパー。何者かがコアキーパーさえも同化素材として使い、ドンドンと合体させたのか。
「んふっ!!」
ネスティスはドンドンが通り過ぎる最中、思わず声が出そうになったのを、寸前で口を抑えた。
彼女はドンドンやコアキーパーの姿に驚いたわけじゃない。いや、コアキーパーで間違いないのだが……




