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9.俺の唐揚げ要員一号二号

 このクラスメイト男子らの中心人物は、山城真悟(やましろしんご)という男子バスケットボール部員らしい。いうなれば山城グループという訳である。

 真悟は所謂細マッチョで、長身のイケメンだった。教室ではいつも誰かしら女子とつるんでいる。異性の扱いには長けているのかも知れない。

 その真悟が馴れ馴れしく優衣の肩に触れようとしたが、優衣は半ば反射的な動きでその手を躱し、辰樹の分厚い筋肉の鎧の裏側にさっと隠れた。


「あれ~? 何かツレないなぁ。オレ達とも一緒に遊んでよ」


 真悟は辰樹に侮蔑の笑みを送ってから、優衣を追いかける様にしてぐるりと回り込もうとした。

 ところがそれよりも早く、辰樹の掌が真悟の肩を掴んだ。


「あんた、良い肩してますね」

「はぁ? おめぇ、気安く俺の肩に……」


 そこまでいいかけた真悟だったが、不意に彼は苦悶の表情を浮かべてその場に片膝をついた。


「ぐぁ……い、痛てててててて……て、てめっ……な、何しやが……」

「いやー、ホントに良い肩してますね。惚れ惚れしちゃいます」


 辰樹はしれっとした表情で明後日の方向に視線を流していたが、真悟は苦痛に顔を歪めて何とか辰樹の手を振り払おうとする。

 が、余りにも腕力に差があり過ぎた。真悟は己の肩を破壊せんとする辰樹の手から逃れることが出来ず、辛うじて手首を掴むばかりであった。

 流石にこの頃になると真悟の異常に気付いたのだろう、彼のグループの男子達が輪を作る形でわらわらと近付いてきた。


「おい佐山、オマエ何やってんだよ! 山城、痛がってんじゃねぇか!」

「んな訳ないでしょう。こんなに立派に鍛えた良いカラダしてるのに、俺が掴んだくらいで痛がるなんておかしいですよ」


 辰樹は、口では真悟を褒めている。嘲笑ったり、罵倒したりはしない。ただただ称賛するばかり。

 それだけに山城グループの男子達も、どう対処すれば良いのか困っている様子だった。


「えっと、お名前何でしたっけ?」

「そいつは山城だよ……もう良いからさ、放してやれって」


 山城グループの他の男子が更に言葉を繋げると、辰樹はそこで漸く力を抜いた。真悟は尚も苦痛に顔を歪めたまま、悔しそうに数歩退いた。


「オマエ、ちょっと洒落になってねぇって……大体、何様なんだよ。オマエみてーな陰キャが、天坂ちゃんと若乃っちを侍らせてるなんて……」

「それは認識の相違ってやつです」


 山城グループの面々に応じてから、辰樹は尚もおっかなびっくりの様子のふたりの美少女を一瞥した。


「このひとらは、俺の唐揚げ要員ですんで。無理に連れて行こうってんなら、俺を倒してからにして下さい」

「は……唐揚げ要員?」


 真悟が信じられないといわんばかりの調子で大きく顔を歪めた。

 ところが辰樹のその台詞に何かを察したのか、いきなり優衣が白いビキニに覆われた巨乳を盛大に反り返しながら直立不動の姿勢を取り、辰樹に敬礼を送ってきた。


「イエッサー! 唐揚げ要員一号! チーズ味とレモン味を調達して参ります!」


 そしてそのままくるりと踵を返し、むっちりとした色っぽい尻を左右に揺らしてフードコーナーへと足早に去ってゆく。

 そんな優衣に続いて、今度は彩香も同じ様にびしっと敬礼。


「イエッサー! 唐揚げ要員二号! レギュラー味とホットチリソース味の調達に向かうであります!」


 そして矢張り同じく、セクシー満開なビキニ姿を果敢に走らせて、優衣の後を追う格好でフードコーナーへと消えていった。

 山城グループの面々は、唖然としたままふたりの美少女の後姿を見送っている。

 しかしこれこそが、本来あるべき姿だ。

 彩香と優衣は、ここの唐揚げが美味いからという理由で辰樹を誘ってきたのである。ならば、あのふたりが唐揚げ要員としてきびきび働くのは当然の話だろう。


「ってか、マジかよ……うちのクラスの美女ふたりを、唐揚げのパシリに使うなんて……」


 真悟も、そして彼のグループの取り巻き男子らも、彩香と優衣の唐揚げ要員としての献身的な姿にすっかり色を失い、すごすごと去っていった。

 あんな連中如きに、辰樹の唐揚げ道を邪魔されてなるものか。

 辰樹はふふんと鼻を鳴らして豪腕を組んだ。

 するとそれからしばらくして、彩香と優衣がそれぞれ購入を宣言した唐揚げを持ち帰ってきた。

 ふたりは山城グループが姿を消したことに安堵したのか、揃ってほっとした表情を浮かべている。


「ありがと、佐山くん……正直、どうなることか思っちゃった」


 優衣が心から安心した様子で極上の笑みを浮かべた。

 しかし辰樹は美少女の笑顔などには興味は無く、彼女が手にしている唐揚げにのみ意識を向けていた。


「それでは開封の儀を執り行います。各々がた、そちらのテーブルへ」

「……たっちゃん、時々変な厨二病になるよね」


 微妙に呆れた表情の彩香。

 しかし辰樹はまるで聞こえぬふりをして、ふたりが買って来た唐揚げ4セットを手近のデッキテーブル上に並べさせた。

 いよいよ、御開帳である。


◆ ◇ ◆


 プールから帰った辰樹はふと思い出し、彩香に借りた漫画を返す為に彼女を自身の部屋へと招いた。

 彩香はすっかり舞い上がった様子で、随分と御機嫌な笑顔を浮かべている。


(ちょっとムカつくけど……まぁ、これぐらいは勘弁してやろうか……)


 辰樹の脳裏には今も尚、彩香と諒一がこれ見よがしにディープキスを交わしていた姿が、色濃く張り付いている。

 あんな光景を見せつけられては、最早彩香を異性として認識するのは無理だ。

 しかし幼馴染みの友人としてであれば、辛うじて彼女の美貌を真正面から見ることも出来ない訳ではない。

 矢張り腹は立つが、そこはもうぐっと我慢するしかないだろう。何といっても、彼女はお隣さんなのだ。嫌でも顔を合わせることになる。

 そんな相手に、いつまでも距離を置くことなど出来る訳もなかった。

 ところが――。


「ね、たっちゃん。今日は、楽しかったね」


 ブックシェルフに向かって腰を下ろしていた辰樹の背中に、彩香が抱き着いてきた。


(こんにゃろう……また調子に乗りやがって……)


 辰樹は今にもブチ切れそうになったが、ここは何とか堪えた。

 矢張り一度、懇々と説教してやる必要がありそうだった。

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