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8.俺の友人美女達は無駄にエロい

 放課後を迎えてそろそろ帰ろうかと準備を進めていると、彩香と優衣が揃って辰樹の自席前に顔を並べた。


「たっちゃん、この後、ヒマ?」


 妙にわくわくした様子で、期待の眼差しを投げかけてくる彩香。

 一方の優衣も、若干前屈みの姿勢にってその完璧な程の美貌を寄せてくる。その瞳には彩香と同様、辰樹の反応に何らかの期待を抱いている様にも見えた。


(このひとら、いつの間に仲良くなっちゃったのかしら)


 ふとそんな疑問を抱いた辰樹。

 諒一らのヤリサー部屋に連れ込まれた被害者同士ということを除いては、余り接点らしい接点は無かったようにも思えるのだが。

 或いは辰樹の知らないところで、何か意気投合する切っ掛けでもあったのかも知れない。


「もし良かったら佐山くん、プール行かない?」


 次いで優衣がそんな提案を持ち掛けてきた。

 今日は週末、金曜日。

 明日は授業が無いから、少しぐらい疲労が残っても大丈夫だろうということらしいのだが、何故にプールなのか。そろそろ夏の陽射しが強くなってきたとはいえ、時期的にはまだ少し早くはないか。


「駅前にさ、屋内型のレジャープールが新しくオープンしたんだけど、たっちゃん、知ってる?」

「知らない」


 辰樹は即答した。

 そもそも、その手の遊びには全く疎い辰樹。知っている筈がない。

 すると彩香と優衣は、矢張りそうかとまるで想定していたかの様な反応で互いに苦笑を浮かべていた。


「うちの親からね、タダ券が貰えたのよ。だからね、良かったら三人でどうかなって」


 優衣の申し入れに対し、辰樹は渋い表情を浮かべた。

 何故、自分なのか。どうしてこの美少女ふたりは俺に構おうとするのか。

 優衣は兎も角、彩香はそんなに吹っ切れた様子で絡んでくる立場でも無いだろうに。

 否、彼女は辰樹が、今後も幼馴染みとしての接点は残すと宣言したことに気を良くして、調子に乗っているのだろうか。

 彩香の性格を考えれば、その線も大いにあり得る。


(俺が女性不信になった原因作っておいて、呑気なものだよな……)


 内心で大きな溜息を漏らした辰樹。

 クラスメイトや顔見知り程度ならばどうってことはないが、友人関係ともなると話は別だ。恋人などは以ての外だが、友人として接するとなると少々心構えが違ってくる。

 少なくとも、異性として認識すると相当に気分が萎えてしまうのだ。

 だから女性のフェロモンをぷんぷん漂わせる水着姿などは、本音をいえば余り見たくない。


(このふたり……どう見てもエッチなカラダしてるんだもんなぁ)


 推定Hカップの巨乳を誇る優衣は考えるまでもないが、実は彩香も結構なグラマラス美女だ。そんなふたりが水着姿になどなろうものなら、嫌でも異性としての認識が脳裏に湧いてしまう。

 ところがこの直後、優衣が放ったひと言が辰樹の渋る態度を一変させた。


「あ、実はね、そこのプールに入ってる唐揚げ店なんだけど、すっごく美味しいだって」

「行かねばならんな」


 キリっとした顔で瞬時に応じた辰樹。

 ものの見事に美少女ふたりの掌で踊らされている。


◆ ◇ ◆


 そして、夕刻。

 截拳道で鍛え上げた鋼の様な筋肉をそれとなく披露しながら、ハーフパンツスタイルの水着でプールサイドに姿を現した辰樹。

 防水スマホカバーを腰からぶら下げ、手首には施設内共通の支払い用リストバンドを巻いている。

 そこへ、グラビアアイドルかと思わせるセクシーなビキニ姿の彩香と優衣が合流してきた。


「お待たせ~。じゃあ、行こっか」

「最初はやっぱり、ウォータースライダーかしら?」


 ふたりが左右から辰樹の剛腕に白い肌を密着する様な形で腕を絡ませてきて、おまけに柔らかな胸の膨らみを押し付けてくる。

 が、この時の辰樹の意識はプールサイドの一角を占めるフードコーナーに釘付けとなっていた。

 そんな辰樹の視線に気付いたのか、彩香と優衣は慌てて、そしていささか強引に辰樹の体躯をウォータースライダーの行列方向へと切り替えさせた。


「たっちゃん、食い気は後ね、後」

「まずはスライダー行きましょ。並ばないといけないし」


 無理矢理ウォータースライダーの行列へと引っ張ってゆかれた辰樹。


(ただのデカい滑り台じゃないか……)


 下手なことをいえば周りの利用客を不快にさせかねない為、敢えて口には出さなかったが、辰樹としては矢張り唐揚げの方が余程に魅力的に思えて仕方が無かった。

 その後、三人は立て続けに水が流れるチューブタイプの大型滑り台を滑走し、水飛沫を上げてランディングプールに着水。

 彩香と優衣は大はしゃぎしていたが、辰樹は虚無の顔だった。

 取り敢えず、義理は果たした。

 後はフードコーナーに直行するのみであろう。

 ところが――。


「あれ~? 若乃っちに天坂ちゃんじゃん。珍しい組み合わせだなー」


 どこかから、若い男の声。

 見ると、見覚えのある顔が幾つかたむろして、こちらに視線を送っている。

 確か、いずれも同じ二年A組のクラスメイト男子達だった筈だが、名前はよく覚えていない。

 彩香と優衣は一瞬、その美貌に変な表情を浮かべていた。余り嬉しくはなさそうな感情が滲んでいるのが、何となく見て取れた。


「なぁ~、一緒に遊ばない? 野郎ばっかりじゃさぁ、ちょっとむさくるしいっつぅかさぁ」

「やっぱこーゆーとこは、女子と一緒に来た方が楽しいよね」


 他の連中も口々にそんな台詞を吐きながら、当たり前の様に歩を寄せてきた。

 彩香と優衣は困り顔を浮かべているが、辰樹は全然違うことを考えている。


(唐揚げ……いつになったら食えるんだ)


 どうやら、今少しお預けを喰らいそうな雰囲気だった。

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