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3.俺のクラスの超絶美少女な委員長もどこかおかしい

 翌日。

 いつも通りに登校した辰樹だったが、自席に就くなり、奇妙な光景に遭遇した。

 どういう訳か、隣の席にどこかで見た覚えのある美少女が当たり前の様に座っていたのである。

 優衣だった。


「……何してらっしゃるんですか」

「えぇと……佐山くんのことについて、もっとよく知る必要があるなって思って」


 何故か得意げになって、推定Hカップの巨乳を盛大に揺らしながらえっへんと胸を反らした優衣。その見事な乳揺れに、周辺のクラスメイト男子らが変に色めき立っている。

 同時に優衣と仲が良いと思われる数名のクラスメイト女子らが、


「天坂、やめときなって」

「下手に関わったら食い殺されちゃうよ……!」


 などと好き放題いいまくって優衣を辰樹から引き離そうと説得を試みていた。

 そして辰樹自身も、


(俺と関わったら碌な目に遭わないよ……)


 と、物凄く心配してしまった。

 優衣はどうやら少し世間知らずというか、男知らずというか、少々ヤバそうな方向に知見が足りない様に思われる。だから昨日、あのヤリサー部屋にほいほいついていったのだろう。

 後で聞いた話によれば、優衣をヤリサーの魔の手に引きずり込んだのは、諒一だったらしい。

 確かにあの男はイケメンではあるが、しかし何をどうしたら優衣はあんなにも簡単に引っ張り込まれたりしたのだろうか。

 その辺がよく分からないのだが、どうもこの優衣という超絶美貌のクラスメイトは、簡単にひとを信じすぎるきらいがある様だ。

 だからこそ彼女の友人らは、優衣が辰樹と関わろうとしている今も、危ないからやめとけ、などと心配に心配を重ねているものと思われる。


「そういう訳にはいかないわ。だってわたし、クラス委員だもの。クラスの皆のことは、ちゃんと理解しておかなくっちゃ」


 尤もらしい台詞を放って周囲に理解を求めようとしている優衣。

 いわんとしていることは理に適っているのだが、彼女の表情にはどうも、クラス委員としての使命感の他に、少しばかりプライベートな匂いがぷんぷんしている。

 勿論、その理由は辰樹にも何となく察しがついているのだが。


(昨日の救出に、変な恩義とか感じちゃってるみたいだよな、このひと……)


 そんなことは別に気にしなくても良いのに――辰樹としては、彩香を助ける際のついでで優衣を救出しただけに過ぎない。

 それなのに、まるで自分を救世主の様に崇めるのは如何なものか。

 いや、流石に救世主は少しいい過ぎかも知れないが、それでも矢張り、彼女が一定の恩義を感じているのは間違い無さそうであった。


(いやホント、マジで気にしなくて良いんだけどさ……)


 彩香に裏切られたことが若干のトラウマと化し、女子と関わることが微妙に面倒臭くなり始めている辰樹。

 しかも優衣は、どうやら校内でもトップ3に入るといわれる程の美少女だということが、周囲の囁きから何となく察することが出来た。

 それ程の有名人と必要以上に関わってしまうと、後々厄介なことになりかねない。

 矢張りここは、何とか彼女と距離を置くのがベストだろうか。

 とはいえ、良い方法が思い浮かばない。


(何か、天坂さんに嫌われることでもやらかしたら良いのかな?)


 ふとそんなことを考えた辰樹だったが、下手なことをすれば犯罪に手を染めることにもなりかねない為、ここは慎重に検討する必要がありそうだ。


(セクハラとか猥褻罪になりそうなことは、絶対駄目だよな……んなことしたら、俺が警察の厄介になっちまう……)


 クラスの連中に嫌われる程度なら何の問題も無いのだが、親に迷惑をかける様な真似だけは是が非でも回避しなければならない。

 その上で、優衣を遠ざけるベストな方法を考える必要があるだろう。


(そうだなぁ……女子に嫌われることっていったら例えば……)


 と、ここで辰樹はひとつのアイデアに辿り着いた。

 屁だ。

 盛大な放屁を一発ぶちかませば、とんでもなく失礼な奴だとして、優衣も愛想を尽かせるに違いない。

 そんな訳で辰樹は、腕を組んでしかめっ面になりながら、腹の底に力を込めた。余り盛大に踏ん張ると、脱糞してしまう恐れがある。

 この辺は絶妙な力加減が必要となるだろう。

 ところが――。


「えっと……佐山くん、どうしたの? 何だかさっきから顔が真っ赤になってるけど」

「……屁が出ないんです、委員長」


 思わず、素直に答えてしまった辰樹。

 一方の優衣も意味が分からなかったらしく、端正な顔にきょとんとした表情を浮かべて辰樹の顔をまじまじと眺めてきた。


「そのぅ……佐山くんはお通じが悪いのかしら?」

「多分、そうみたいです、委員長」


 我ながら一体これは何の問答なのかと小っ恥ずかしくなってきた辰樹だが、しかしどんなに頑張っても出ないものは仕方が無い。


「委員長、こんな時は、どうすれば宜しかろう」

「そうね……お芋さん食べたら、良いんじゃないかしら」


 優衣も優衣で、物凄く大真面目に答えてくる。

 一体どこの世界に、屁が出ないと苦しむクラスメイトに本気で放屁をアドバイスする巨乳な超絶美少女が居るのだろうか。

 否、目の前に居た。


「委員長……自分で訊いておいて何ですが、すんげぇ恥ずかしいです」

「佐山くん、お通じは放っておくと大変なことになるから、真剣に考えた方が良いよ」


 結局優衣は、最後まで真面目な対応に終始した。

 教室内には物凄く微妙な空気が流れていた。

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