表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/52

14 決着

「イヴ!」


 ローラが叫ぶと、イヴはローラを見て静かに微笑んだ。そこにいるのはエルヴィンではなく、間違いなくイヴだった。


「もう一度イヴの体にエルヴィン殿下を!イヴを抑えてください!」


 クローの言葉にイヴの兄たちが慌ててイヴを抑えつけようとする。だが、突然イヴの兄たちは弾き飛ばされた。


「させねぇよ」


 フェインが魔法でイヴの兄たちを弾き飛ばしたのだ。そのまま拘束魔法をかけて動けなくする。


 さらに、ヴェルデがイヴに防御魔法をかけて攻撃されないようにした。


「形勢逆転だな、クロー」


 ヴェルデが厳しい顔つきでクローを睨みつけると、クローは悔しそうに唇を噛んだ。だが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。


「ふっ、ははは、これで勝ったつもりですか?憑依する体がなければ、俺がなればいい」


 そう言って、クローは片手を自分の胸に当てると、クローの胸元に魔法陣が浮かび上がる。


「そうはさせない」


 突然、どこからともなく声がして、クローの近くに魔法陣が浮かび上がり、そこにはクレイがいた。


「師匠!やっと、やっと会いに来てくれたんですね!」


 クローはクレイを見て目を輝かせる。だが、クレイの表情は厳しかった。


「こんなことになるならお前を野放しにするべきではなかった」

「師匠、俺は蘇りの魔法を完成させたんです!今度は自分の体を使ってまた必ず成功させます!だから」

「それはダメだと言っただろう」


 クレイがそう言って片手をイヴから出た黒いモヤに向けると、黒いモヤにバチッと電流が走り、稲妻の鎖が拘束する。


「師匠!何をするんですか!」

「お前を追放した時、魔法を取り上げるのはあまりにも可哀想だと思った。だが、やはりあの時に取り上げるべきだったな」


 クレイはそう言ってクローの額に片手をかざすと、クローの胸元の魔法陣が消える。そして、クレイの額も輝きだした。


「師匠、何を……!」

「お前は禁忌を犯した。その罪はきちんと償わなければいけない。そして、お前はもう二度と魔法を使うことはできない」


 クレイの言葉に、クローは両目を大きく見開いた。


「師匠……どうして!師匠!やだ!俺から魔法を奪わないで!師匠!」


 クローが涙を浮かべて懇願するが、クレイは感情の籠らない瞳でクローを見つめている。そして、クローの額に浮かび上がった魔法陣が黄金に輝くと、クローの体から光が四方八方へ飛び散った。


「あ、ああ、俺の、魔力が……」


 クローは呆然としながら宙を見つめている。そんなクローを、クレイは魔法で拘束した。


「……!イヴ!」


始終を見届けていたローラはハッと我にかえり、イヴの元へ駆け寄る。イヴは体を起こしているがまだ立ち上がれる様子ではない。それでも、イヴはローラを見て微笑んだ。


「何とか、大丈夫だ」

「よかった……」


 ローラが安堵の表情を浮かべると、ヴェルデとフェインもイヴとローラのそばへ駆け寄った。


「怪我を治そう」


 ヴェルデがそう言うと、イヴの首元が一瞬輝き、剣でつけられた切り傷が消えた。


「それにしてもよく自力でエルヴィンを追い出したな」


 フェインが感心したように言うと、イヴは苦笑した。


「自分でもよくわかってないんだ。ただただ無我夢中で、ローラ嬢を助けなければと思ったらああなってた」


 フッと微笑むイヴを見て、ローラは涙を浮かべる。


「ありがとう、イヴ。あなたのおかげよ」

「そんなことない。ローラこそ、俺を助けようとしてくれただろ」


「どうして……どうしてだ……エルヴィン殿下がイヴの体から抜けなければこんなことには……」


 ぶつぶつとクローが一人で呟いている。そんなクローへクレイは冷ややかな視線を向けた。


「体となる本体の同意も得ないまま生きてる人間に憑依させれば、本体の魂がそれを拒絶する。拒絶が強ければ強いほど弾き飛ばされるのは当たり前のことだ。そんなこともわからないまま禁忌に手を出したのか、愚か者」


 クレイの怒りに満ちた言葉に、クローはいつの間にか涙を流し、嗚咽を漏らす。


「そういえば師匠、よくここがわかりましたね」


 ヴェルデの言葉に、クレイは眉を下げて微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ