表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/52

1 予期せぬ出会い

一度完結させましたが、番外編として後日談を掲載です。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

 ローラがヴェルデの元で生活するようになって一年が経った。その間に、二人は婚約を経て結婚。結婚式はサイレーン国で行われ、ティアール国第一王子のメイナードも出席し祝福した。


「結婚したのですから、そろそろ様をつけるのはやめませんか?」


 式が終わって数週間後。ローラがヴェルデに言う。ヴェルデは相変わらずローラのことをローラ様、と呼ぶのだ。


「それを言うならローラ様だって俺のことを様をつけて呼ぶじゃないですか。俺にやめろと言うならローラ様もやめてくれないと」

「そ、それは……私の方が年下ですし、まずはヴェルデ様が先にやめてくださればと」

「そしたら、ローラ様もそのうちやめてくれますか?」


 ヴェルデの問いに、ローラはためらいがちに頷いた。


「わかりました。それじゃ、これからは様をつけずに呼びますね。よろしく、ローラ」


 少し意地悪そうに微笑みながら、ローラと鼻先が触れるほどの距離でヴェルデが言う。


(ず、ずるい!そんな言い方するなんて……それに、いざ呼ばれるとドキドキしてしまうわ)


 ローラは自分の提案に、ほんの少しだけ後悔をした。


 そうして、平穏な生活を送っていたとある日。



 ヴェルデとローラは街へ買い物にやって来ていた。サイレーン国には年に数回、他国から複数の行商がやってきて珍しい品物を販売しており、この日は二人でそれを見に来ていたのだ。


「すごいですね、こんなにも珍しい品が沢山……!」


 ローラは目を輝かせてあちこちに視線を動かす。そんなローラを見て、ヴェルデは嬉しそうに言った。


「サイレーン国には無い果物や野菜、書籍や宝石や織物などいろいろなものがある。好きなだけ見て回っていいよ」


 ローラに様をつけず、敬語ではなくフランクに話すことに慣れ始めたヴェルデだが、ローラはそのことにまだ少しこそばゆさを感じていた。


(夫婦になったのだから当たり前のことなのだけれど、やっぱりまだ恥ずかしいわ……自分から望んだことなのに。でも、ヴェルデ様だって頑張ってくださったのだから、私も早く慣れないと)


 そんなことを思いながら歩いていると、ふとローラの目に珍しい織物が飛び込む。そこには色とりどりの織物があり、複雑な刺繍の施された衣服も多数置かれていた。


「いらっしゃい」


 フードを深く被った店主が、ローラに声をかけた。


「とても綺麗な織物ですね」


 フワッと微笑みながら言うローラを、フードから店主がチラリとみる。フードから少し覗く瞳はルビーのように赤い。その目と合い、ローラは心臓が跳ね上がる。


「っ!……エルヴィン殿下?」


 ローラの発した言葉はか細い。だが、その一言は店主の耳にも、そして隣にいたヴェルデにも聞こえていた。


「あんた、まさか……ローラ姫?」


 フードを片手でおろし、驚愕の眼差しでローラを見つめる店主。そして、そんな店主を見てローラはついに息を呑んだ。


「どう、して……」


 ローラの異変に気づいたヴェルデが、ローラの前に立ち視界を遮る。ヴェルデは店主を睨みつけた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ