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異世界を信じていない人の話

作者: Ran d'Reille

陽斗(はると)…本当に起きたのか…」

 病院のベッドに座っている人は、俺の友達、久世(くぜ)陽斗(はると)

「よう、圭太(けいた)くん。元気かい?」

 微笑みを浮かべ、陽斗が俺に手を振る。

 今の彼を見ると、先ばかりの昏睡状態は夢のようになってしまった。

「お前…無事か?どこか痛いところはあるのか?」

「なんだよ…君、相変わらず心配性だな、渋沢(しぶさわ)圭太(けいた)。」

 あいつも…相変わらず気楽な人なんだな。

「しかし…渋沢圭太…か…そうだな…懐かしい名前だな…もう何年間が経ったんでしたっけ?」

「大げさだろうそれ。ただ一週間だよ。」

「…え?」

 呆然しげに、陽斗は首を傾げる。

 おいおいおいなんなんだよその顔。

「いや、マジでただ一週間なのかい?」

「なんだよその反応?マジだってば!」

 俺はポケットからスマホを出し、陽斗にスマホの画面を見せる。

「…本当だな…」

「お前、また俺を揶揄ってるんすか?」

「えっとね…」

 考えてるのような陽斗は目を閉じる。


 ***


「あのさぁ、圭太…多分君が信じられないが…実はな…僕、異世界に行ったんだ。」

「は~い。信じられな~い。」

「君が信じられなくても、それは事実です。」

「おい。冗談はいい加減にしろ。」

「冗談じゃないよ。」

 こいつ…どこまでこの冗談を続くつもり?俺はアホって思ってんのか?

「じゃあ、本当に異世界に行ったとしたらそれを証明しろ。」

「証明…って言われてもなぁ…」

 陽斗は目を腕を組み、考え始める。

 ほら。チェックメイトだ。諦めろ!

「あぁ、そうだ!ペンと紙を貸して!」

「…諦める気はなさそうだな…何をするつもり?」

「いいから貸してくれ。」

 俺はカバンからペンと手帳を取り出し、陽斗に渡す。

 そして、手帳で陽斗は何か変な文字を書き始める。

「…何を書いてるんだ、お前?」

「これを見て。これは向こうの世界の言語なんだ。」

「…はぁ?」

「ここに書いてるのは『僕は久世陽斗』って意味なんだ。」

「…ふむふむ…面白い。」

「これで、信じる気がするのかい?」

「…お前、想像力はすごいな。本当に作家になるかもなぁ。」

 陽斗は失望げにため息を吐く。

「これだけで俺が信じさせると思ったら甘いなぁ。」

 そう。これは証拠とは言えない。異世界より、これはただの妄想の方が信じやすいからなぁ。これだけで何も証明していない。

「しかしなぁ、陽斗…お前が知ってるはずだ…俺はどれだけ異世界ジャンルは大嫌いってことが!!この冗談は全然面白くないなんだよ!!!」

 そうだ…全部異世界の妄想のせいで…父さんが…

 俺の反応を見て、陽斗は頭を振り、またため息を吐く。

「圭太…信じなくてもいい…それでもお願いだから…僕の話を聞いてくれ。僕は冗談をするとか、噓つくとか、君をからかうとか、そのつもりはないんです。」

 …ほんとにしつこいなぁ、こいつ…普段こうじゃなかったと思うんだが…

「…好きにしろ。」

 諦めるように俺もため息を吐く。


 ***


 俺はモバゲーを遊びながら、陽斗のつまらない話…彼が行った『異世界』についての話を聞いている。彼は『ライカード・ラゴン王国』に召喚されたとか…魔王討伐軍団に徴兵され、アーチャーになったとか…全部面白くねぇ話なんだな。全く興味ねぇんだよ。それでも、陽斗はその話を語り続ける。

「そういえば…確かもう一人の日本人も召喚されて、彼は聖剣を使い、聖剣士になった。討伐軍で一番強くて、マジで頼られる人だった。」

「あっそ…」

「彼の名前はなんでしたっけ…確か…福岡出身の阿波野(あわの)久太郎(きゅうたろう)だった。」

「へえー。」

「僕と彼は10年間その世界で一緒に魔王軍と戦って、色んな悪魔を倒したんだ…」

「はいはい。」

「あぁ、けど魔王と戦った時、僕が死んじゃったんですけどね。」

「あっそ。…えぇ?」

 ちょっとびっくりして、俺は手で持ってたスマホを落とす。

「お前が死んだ?」

「そう、そう。魔王の目のレーザーが僕の首を貫いたね。そして次の瞬間…僕の首が切り落とされたんだね。」

「じゃあ魔王が勝ったの?」

「いやぁそんなことないね…久太郎さんは絶対に負けないと思うからね。あいつマジで強いから。」

「じゃあ、この話の主人公はお前じゃなく、久太郎の奴ってこと?」

「それは…そうかもね。」

 陽斗はちょっと笑って、微笑を浮かべる。

「それじゃあ、この久太郎ってやつは聖剣で魔王を倒して、そして現実に戻ったとでも?」

「ふん…かもね。しかし僕はもう死んだから、知らないね。」

「はぁ…ちょっとクリフハンガーだな、君のラノベは。」

「だからラノベじゃないってば。やっぱこうしても圭太は信じないか…」

 陽斗はまたちょっと笑う。

「ねぇ。ちょっといい証明する方法考えたんだけど、興味ある?」

「諦めないんでな、お前。」

「これも失敗したら諦めるから、聞いて。君、弓術はうまいんでしょう?」

「この弓道部部長の俺様に聞くか?」

「僕が退院後、弓術を勝負しようかい?」

「バカな。お前勝てるわけねぇだろう。」

「そうね。『異世界に行かなかった僕』なら絶対に負けるんですね。しかし、『10年間異世界でアーチャーとして魔王軍と戦った僕』なら絶対に勝つかもしれないんですよ。」

「…なるほど。たしかにいい提案でな。それじゃあ、お前が退院後、勝負しよう。」

 そう言って、俺は立ち去る。

 ***

 数日後、陽斗は退院され、その翌日登校することになる。そして、その放課後…

「本当に弓道勝負をするかよ…」

「なんだ?冗談だけだと思ったのかい?それとも…怖がってるのかい?」

「ほう…言うじゃねぇか?後悔すんなよ…俺、負けるつもりねぇから。これでお前の妄想をぶち壊すんだとしたら、俺は手加減なんてしねぇ。」

「ふむ、いい勢いだ。君が全力で行かなくちゃ、証明にならないんですから。」

「お前が勝てるなら、な。」

 そうやって会話しながら歩き、そして数分後、弓道場にたどり着いた。

「うをぉ、僕はここに来るのは初めてのかな…学校の弓道場はこんなに広くて知らなかった!」

「ふむ当たり前だろ。この弓道部は我が校の誇りの一つだ。」

 この学校の弓道部はとてもガチだ。入口からすぐ隣にある棚で、数々のトロフィーは並んでいる。この学校は優秀の弓道部を持ち、そのために弓道場を含めて弓道部の設備にちゃんと金を入れた。

 今日の勝負のために、俺はもう部員に指示を出し、数々の的はすでに並んでいた。

「お前は弓道のルール分かる?」

「えっとね…僕が学んだ弓術は多分日本の弓道とは全然違って…」

「だろうな。それじゃ、今回の勝負では普通の弓道ルールを使わねぇ。こうすればどう?3回弓と矢で的を射ることでポイントをもらう。矢が的の中心に当たったら、100ポイントをもらい、中心から外せば外すほど、もらえるポイントが下がる。30m以上の距離の的を当てるとポイントは2倍、60m以上の距離の的を当てると3倍。」

 この勝負では俺は自信を持つ。完璧の900ポイントを取るのは俺にとって朝飯前はず。

 説明を聞いて、陽斗は一旦沈黙する。

「どうした?文句でもあるのか?」

「いやぁ…けどなんか…この勝負の形では、精度だけだな~と思って…」

「それで問題か?」

「その…僕が異世界で魔王討伐軍のアーチャーとして弓を使う時、大切なのは精度だけじゃなかったんすね。例えばスピードも大切で、場合によって精度よりでも大事だな。例えば相手はオーガなどドラゴンなら、適切な射撃より、速射で倒す方が楽ですね。だから、精度だけで勝負するのはちょっとつまらないなぁと思って…」

「…じゃあ、提案でもあるか?」

「そうですね…これならどうですか?向こうの世界では、アーチャー勝負といえば、制限時間で的を射ることですね。この形なら、大切なのは精度だけではなく、どれほど矢を放つことが早いことも大事だね。」

 その提案を聞いて、俺は沈黙する。今まで俺は精度を注目し、速射はあんまり練習しなかったから、ちょっと不安だ。

「どうしたんですか?もしかして怯えてる?僕が本当に異世界になんて行ったと信じてないなら、僕は初心者の相手で、怯えてる必要はないんですよ」

 その言葉は俺にとって、雷のようだった。

 もしかして俺、あいつの話を信じ始めたのか?バカな!

 そう。相手は初心者のはず。俺は怯えてる理由などない。

「…いいんだろう。お前の提案で勝負しよう。制限時間の1分でポイントを稼ぐ勝負だ」


 ***


「えっと…勝負する前に、予行演習として一矢を放ってみたいんですけど。ここの弓のパワー確かめたくて…」

「問題ねぇ。好きにしろ。」

 それで、陽斗は弓を選んで、一矢を放ってみる。

 陽斗は弓に矢を番えて、そして放つ。

 60m距離の的を狙ったみたいんだが、的に届かなかった。

「ふむふむ…なるほど。じゃあ、もう一回!」

 陽斗はまた矢を放つ。

 今回、矢は無事に的まで当たったが、ちょっとだけ中心から外れた。

 それを見て、唾を呑む。

 何…これ…あいつ、初心者なはずなんじゃ?ちょっとうますぎねぇ?まさか…

「先輩、大丈夫ですか?顔色悪いんですわね…」

「…あぁ、美亜(みあ)か…俺は…大丈夫だ…と思う…」

 俺を心配して、隣に立っている銀髪のちょっとちびな女の子は、彼女の涙月(なみだつき)美亜(みあ)。弓道部の部員で、先月ばかりから付き合って始めた。

「コホン…俺は大丈夫だ。心配しなくていい。ちょっとびっくりしただけだ。」

「…ふむ…確かにすごいわね。あれ、初心者の動きじゃないわ…彼は初心者とはちょっと考えられない…」

 そう言って、美亜は陽斗の動きを眺め続ける。俺もまた、陽斗の練習を注目する。

 今回、陽斗は右手で3本の矢を持つ。そうやって陽斗は他の2本の矢を持ちながら、1本目の矢を弓に番える。

 まさか…

 バ!

 陽斗は1本目の矢を放ち、その次の瞬間…すぐ2本目を番え…

 バ!バ!

 連続で、陽斗は3本の矢を速射した。

 矢は全部、それぞれの的に当たった。中心からちょっと外れたが…それでも…

「まぁ!すごいですわ!あの技、今まで見たことないんですわ!あれはまさに…久世流奥義・三連射(トリプル・ショット)ですわ!!」

 美亜は感心しながら言った。ちなみに、見える通り、美亜はちょっと中二病だ。

「ねぇ、ねぇ!彼は本当に初心者なんですの?なんかもう何年間も弓使ったような動きみたいんですが…」

「…それ以上は言うんじゃねぇ。」

「はぇ?」

「異世界なんて…あるわけねぇ…」

「…せ…先輩?」

 気づかずに、俺は美亜を睨んじゃった。美亜の怖がっている姿を見て、冷静を取り戻した。

「…すまん。ちょっとトイレに行く。」

 そう言って、俺は立ち去る。

 先のは…何?

 あいつ…あの技はどこから学んだ?

 病院ででも弓矢を練習したか?いや、ありえねぇ…

 しかし、異世界の存在の方はありえねぇはずだ…

 はず…だ…

 あ、あれぇ…もしかして本当に…?

 そう考えながら、俺は少し鏡を見て…その鏡は、情けねぇ顔を映っている。それを見て、俺は自分の頬を両手で叩く。

「ええぇい!しっかりしろ、俺!覚えておけ、渋沢圭太!異世界の妄想はどんな風にお前の父さんを殺したか、もう忘れたのか!!この勝負は、勝たなければならねぇ。どんな手段を使っても、勝つんだぞ、渋沢圭太!!異世界なんて…絶対に認めてねぇ!!」

 トイレから立ち去り、弓道場に戻る。歩きながら、忘れねぇように、俺は呪文のように「異世界なんて存在しねぇ」を繰り返し言う。

 ***

「おう!圭太、戻ったのか?あっ…」

 陽斗はちょっとぼっとして、俺に視線を向ける。

「大丈夫かい?顔色ちょっと悪そうなんだが…」

「俺は大丈夫。気にするな。お前の予行演習は終わったか?」

「うん。終わったよ。」

「じゃあ、そろそろ始めようか。順番は…じゃんけんで決めよう…」

「わかった。それじゃ…」

 じゃん、けん、ぽん!

 俺はグーを出しそして…

「あら、僕の負けね…やっぱチョキはダメか…」

「それじゃ、俺から始めるんだな。美亜、ストップウォッチを頼む。」

「はい!」

 俺は深呼吸をし、普段使ってる弓を選ぶ。

 これは俺の大切な弓。何回の大会で共に戦った相棒で、美亜よりでも愛してる存在。

 これさえあれば…きっと勝利は手に入れるはず。

「先輩、頑張って!わたくし、応援してまちゅわ!」

 急に、美亜は痛そうな表情を示し、顔が赤くなった。

 あら、舌でも噛んだのか?かわいい。

 ふふ、大切の相棒を持ち、そしてかわいい彼女に応戦されて、心強いな。これで、勝たなきゃならねぇんだ。

「準備できたぞ。始めてくれ。」

「わかりました。それじゃ…3、2、1…スタート!」

 そう聞いて、俺はすぐに矢を弓に番え…慎重にポイント倍率が3倍の的を狙って…

 そして、放つ!

 ピューッ!

 矢が飛んで、そして…中心に当たった!

「「「うおっ!」」」

 観客の部員たち、または陽斗と美亜は叫び、拍手する。

 よし!いい感じだ!

 次の矢をすぐに番えて、また放つ!

 よし!また3倍100ポイントだ!

 次の矢をまた放つと、また3倍100ポイント!

「うおおぉっ!さすが部長!」

「すごいですわ、先輩!」

「やるね、圭太。」

 これで余裕で勝てるんでな。

 そう考えるながら次の矢を弓に番え、そして…

「あと30秒です!」

 しまった!時間忘れた!

 ちょっと焦りになってしまい、矢を放つのはちょっと早すぎちゃった。

 その結果、4本目の矢のポイントは3倍60だけになってしまった。

 やばい…ちょっと遅すぎた。陽斗は速射の術を使うなら、圧倒的な矢の数を活かすだけで、今のペースのポイントを簡単に超えられる。

 早くもっと矢を放たないと!

 まだ大丈夫だ。しかし、もっと矢を放たなければならないんだ。

 そうだ!陽斗が示した術…あれを使ってみようか!

 初心者の陽斗ができるら、俺もできるはずなんだな!

 俺は右手で3本の矢を持ち、そして…!

 バ!バ!バ!

「うおぉ!そう簡単に久世流奥義の三連射を真似できるとは!さすが先輩!」

「ふふふ。やっと面白くなるね。」

 ポイントは3倍80、3倍60、3倍60。

 俺はまた三連射をし、そしてポイントは…

 3倍100、3倍80、3倍80!

 おうっ!いい感じだね!これなら…

「あと10秒です!」

 うわっ、きつっ。多分三連射をする余裕はないかな…

 早くもう一本放てば、ポイントをもっと得られる。

 近い的を狙っても大丈夫だ。大事なのは矢を放つだけだ。

 そして俺は矢を弓に番え…

「3…2…1…」

 放つ!行け!!

「時間です!」

 最後の矢は、2倍100ポイントに当たった。悪くない!

「えっと…それで、先輩の合計ポイントは2480です!」

 ふふ。悪くないかな?これで圧倒的な矢の数だけではそう簡単に超えられないんでしょう。陽斗は速射ができるが、精度はそんなにうまくないみたいで、俺はまだ勝てるかも。

 いや、「かも」じゃなくて、絶対に勝つんだ。自分の実力を信じて。

「それでは僕の出番だな。」

 冷静に、陽斗は準備を始める。

「2480ポイントは確かに強いんですね。しかし、それは僕が相手なら多分それは足りないんですね。」

 穏やかな笑みで、陽斗は俺に視線を向ける。

「見せてみようか、僕の本気の力、そして絶望の意味を!」

 ***

「スタート!」

 そのシグナルで、陽斗はすぐ矢を拾う。

 そこで、俺は気づく。陽斗の右手で持っている矢は3本だけでなく、5本だ。

「見せてあげますね、これはエルフたちに教えてくれた秘密の技だよ。」

 バ!バ!バ!バ!バ!

「…バカな…マジかよ…」

 そう簡単に、陽斗は3連続だけでなく、5連続で矢を速射した。

 ポイントは…3倍60、3倍40、3倍60、ミス、2倍80。合計640ポイントだ。

 俺はまた陽斗に視線を向かうと、陽斗はもうすでに矢を弓に番えた。

 バ!バ!バ!バ!バ!

 3倍40、3倍20、3倍80、2倍60、2倍100…合計740ポイント…

 バ!バ!バ!バ!バ!

 3倍80、2倍60、3倍100、3倍60、3倍40…合計1000ポイント…!

 全部合計すれば…もう2380ポイント…

「あと30秒です!」

 バカな…半分の時間で、ポイントの差はもうただの100ポイント…

「僕は、5000ポイントを狙うよ。」

 気軽に、陽斗は言った。

 やめて…やめてくれ…これ以上は…

 どんどん、俺の視界は暗くなっている…

 ***

 お父さんは研究者だった。仕事で加速器を使い、基本粒子や量子力学を研究した。

 仕事で真面目な人で、家で優しいお父さんだった。

 しかし、ある日…

「お父さん、何をしているんですか?」

「ギャっ!おう…圭太か…びっくりした…!」

 集中したお父さんは驚いて、椅子から倒れちゃった。

「子供には多分説明しにくいが、お父さんは今、異世界を調べているんだよ。」

 お父さんのパソコンの画面に映していたのは、色んなグラフ。

「これはね、今日の実験で集まっていたある粒子のデータ。父さんは、この粒子は異世界から来たんだと信じてるんだ。今お父さんはこのデータを分析し、異世界の存在を証明したいんだ。」

「異世界?じゃあ、エルフもいる?僕、美人なエルフお姉ちゃんと会いたい!」

「はっはっは!今の段階では、それはまだ遠いんですね!けど、きっとエルフがいる世界を見つけたら、お父さんは圭太を連れて行くよ。」

 俺の頭を撫でながら、お父さんは笑った。

 あの日から、お父さんは異世界のことに夢中になっちゃった。

 どんどん、他のことを忘れて、周囲を無視するようになった。

「あなた、もうこんな時間だよ。休まなきゃ、体調が崩しちゃうよ?」

「ああ。もう少しだけだ。ちょっと待ってください。」

 どんどん、お母さんとの関係も悪くなった。

「あなた、明日は圭太の誕生日だよ?私たちは家族として時間を過ごそう?」

「ええい!うるさい!俺はそんな暇はないんだ!」

 ちなみに、その異世界の話は、当然ながら、他の研究者に信じられなかった。だから、父さんの研究室は、異世界の存在を証明する実験など、興味はなかった。それでも、許可をもらわずに加速器を異世界に関する実験のために使い、何度も会社の注意を無視した。その結果、つい首になった…

 それでは、首になって、もう加速器を使うことはできなくて、もう異世界の存在を証明する実験はできなかった…のはずだった。しかし、ここでクイズ:お父さんは、異世界の存在を証明するために、何をしたか?

 答えは、緊急の貯金を使って、加速器を自分で作ってみたんだ。

 当然ながら、あそこで、お母さんの怒りは沸点に超えた。

「あなた、まさか貯金はこのために…!?あの貯金は、緊急のためなんですよ!?」

「俺は首になって、これは充分緊急の事態だ!」

「それで貯金を使って、加速器を作って、この状況を直すつもり!?」

「異世界の存在を証明したいんだとしたら、加速器は必要なんだ!」

「また異世界の話…?あなた…異世界研究か私たちか…どっちが大事なのか、今すぐ選んでください!」

「それは…異世界研究に決まってるんだろう…」

 そうやって、お父さんとお母さんは離婚した。

 多分その心の傷の影響で、お母さんの体調はあの日から、どんどん弱くなっていて、俺が中学3年生の時、亡くなった。

 お母さんの葬式にさえ、お父さんは来なかった。

 お父さんはまだ、異世界研究に夢中だったんだ。当たり前ながら、貯金で作ってみた加速器は失敗だったけど、お父さんはハッキングを勉強したらしい。様々な加速器をハッキングして、陰に異世界の実験をした。

 お母さんが亡くなった日から一年後、お父さんは行方不明になっちゃった…

 ***

「…た!…圭太…!」

 俺が目覚めたら、すぐに見えるのは知らない天井…

 いや、これは保健室…か…

「部長!無事か!?」

「「「部長!!!」」」

 周りを見て、弓道部の部員はみんなは集まってる…

 左に視線を向けると…

「先輩、目覚めたんですね!よかった!」

 俺の左手を強く握って、美亜は泣いている。あぁ、美亜を泣かせたなんて…最悪だな。

「圭太、やっぱり君は今日、具合は悪かったんですね…無理にさせちゃってごめんね。」

 ああ、そうだ。勝負中で…俺が気絶した…か…

 今は…そっか…1時間ぐらい気絶したか…

「勝負の…結果は…?」

「君が倒れたから、僕の出番は中断されたんですね。確か2380ポイントの時点で…」

「じゃあ…俺の勝ちで…いいのか?」

 みんな、呆然としたような表情をしている。

「部長、何を言っているんですか?あれは、途中で中断されたからでしょう?もし続けたんだとしたら、陽斗くんは絶対に勝ったはずなんだと、誰でも見える。」

「あれは言い訳だな。」

「あの…部長…僕たちもう勝負の理由は聞いたんだが、その弓の実力は、充分証明になったかと思うが。」

「そうだな、部長。あのような技ができるのは、初心者ってわけない。俺たちでもできないと思う。まるで本当にもう何年間も弓を使ったような…」

藤原(ふじわら)竹田(たけだ)…お前らはまさか…あいつの味方のかよ…?」

 俺は部員たちの金正と近平を睨みながら、言う。

「いや、そんな話じゃ…僕たちはただ、目撃者として、実際に見たことを否定できないだけで…」

「とにかく俺と陽斗の約束は、俺が勝ったら、異世界の話を認めない。それ以外はただの言い訳だ。」

「言い訳をしているのは君なんじゃないかな、圭太。今の君は、ただの真実から逃げたいだけと見えて、情けない。」

「約束は約束だ。俺は認めない。」

「じゃあ、話を変えよう。僕の出番は中断されたから、やり直し必要がある。どう思う?」

「それは…」

 言葉を出さずに、俺は沈黙しかできない。

「私も、同感ですわ。陽斗先輩は、もう充分証明したと思いますわ。」

「美亜…お前もか…お前まで、俺を裏切ったのか…!」

 美亜まであいつの味方に…?

「先…輩…?」

「…出ていけ…」

「はぇ?」

「お前ら全員、出ていけれ!!!裏切り者め!!!」

「ひぃぃぃいいいぃぃ!」

 美亜は情けない悲鳴な声を漏れる。

「聞こえなかったのか!?出ていけえええぇぇっっ!!!!!!」

 全力で、俺はみんなを睨みながら叫ぶ。

 やっと俺の命令を聞いて、みんな保健室から脱出。

 残ってるのは、俺と保健室の先生だけみたい。

 ***

「君、わっちの保健室で叫ぶのはダメなんじゃ。」

 カーテンの後ろから現れたのは、アラサーの女性の先生の姿。茶色の髪を持ち、メガネを付け、白いコートを着けている。

「…すまん。」

「詳しいはわからぬが、君が事実からを逃げたいだけだと、わっちもそう思うのじゃ。」

「…うるさい。先生には関係ない。」

「わっちは先生なんじゃ。生徒を導くのは、先生の役割なんじゃろう?」

「…好きにしろ。」

「今の君は事実を求めてない。事実を求めている人は、ある証拠を見るから結論を作る。しかし、今の君は、そうじゃありんせん。」

「…あれは…証拠なんかじゃない。異世界より、きっと他の説明があるはず。」

「じゃあ、例えば?」

「そうだな。宇宙人は陽斗を訪れ、先端技術を使って陽斗を夢の中で弓術を鍛えたとか…それとも脳にチップを付けるとか…」

「ほっほ!面白い話なんじゃ。君の想像力は強いんじゃな。作家にでもなるかもしりんせん。」

「…うるさい。べ、別に宇宙人なんか信じるってわけないんだ。ただ、異世界より、宇宙人の方は可能性が高いかと…」

「それはなぜじゃ?宇宙人なんて、証拠でもあるのかや?」

「…少なくとも、まだ物理的に考えられる…宇宙人は超自然的なではない。」

「つまり、超自然的じゃないから、可能性がある。これは、君の考え方。」

「…だって、超自然は、不可能のでは…」

「それ、証明できるのかや?」

「いや、逆じゃないか?超自然を信じる者の方が証明はずじゃ…」

「もし君が言っているのは『超自然なんて証拠はない』ならそうかもしりんせんが、君が言っているのは『超自然は不可能』なんじゃ。つまり、君にも責任あると思わないのかや?2の二乗根は有理数の分数として書くのは不可能だと、証明したことあるんじゃろう?」

「……じゃ、話は『超自然なんて証拠はない』に変えよう。」

「それでよい。しかし、そうなれば、超自然と宇宙人の立場は違っておらぬ。それに、その立場から、もし超自然の現象について証拠(エビデンス)を見つけたら、『超自然はありえないんだからその証拠は絶対に他の説明がある』なんて言えぬ。」

「…」

「君は、数学の証拠(プルーフ)みたいに、絶対に否定できない証拠じゃなかったら、認めないみたいんじゃな…しかし残念ながら、現実ではそういうような証拠をいつももらえる贅沢はありんせん。」

 うるさい。うるさい。うるさい!俺は…異世界なんて…認めてない…!絶対に…お父さんのようには…ならない…

「しかし、運がよかったな。わっちゃ、異世界について、そういうような証拠を示すことはできるのじゃ。」

「…はぁ?」

Arcana(アルカーナ)

「なっ!」

 先生は急に、変な呪文を唱える。ベッドの上で、俺の下に、急に変な輝いている丸い形が現れた。

「…これは…まさか!」

 そういえば、この先生…今まで学校で見たことない!一体…誰だ…?

「さぁ、少年よ。信じるように我が世界を、陽斗くんが自分の命まで使って救った世界を見なさい!」

 いやだぁ…異世界なんて信じたくない…これは絶対に…宇宙人(エイリアン)の悪戯だけだっ!!!

「まだ宇宙人を責めるかよ…頑固な子ね。宇宙人たち可哀想なんじゃ。」

 俺の視界は眩しくなって、全部真っ白になる。

 目を開く時…俺の頭は美人なエルフお姉ちゃんの膝を枕として使っている。


 ~異世界を信じていない人の話~終~


読んでくれてありがとう!これは日本語の練習として書いてみた作品です。日本語はまだ下手で、今まで日本語でショートショートを書く経験もないので、もし変な日本語でもあったら、許してください m(_ _)m


多分弓術勝負の部分は変かな…あまり弓術のこと詳しくないんですから…

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