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ゴミ(ゴミじゃない)

 第二の異世界ライフを楽しむとしても、そう簡単に物事は進まない。何せ今の自分の境遇は数日分の食糧しかなく、仲間もまともな装備もなしで魔獣が跋扈する妖魔の森に放り出されている。水魔法が使えるため水分の確保は問題ないだろうがそれ以外はほぼ絶望的な状況だ。


 騎士の人が商人たちが通る道を教えてくれたのはとてもありがたいことなのだが、もし仮に道中で盗賊に合ってしまえば、後はもう数の暴力でボコボコにされておしまいだろう。なるべくバッドエンドは避けたいし、開始早々ゲームオーバーなんて目も当てられない。


 しかし、そんな俺に幸か不幸かとある力が目を覚ます。魔獣の力を取り込む能力。俺のお腹に走っている紋章によるもので、魔獣を食べるとその魔獣の体の一部を自分の身体に発現することが出来た。これはこれから一人で生きていく上でかなり役立つ力になるだろう。


「うおおお!!すげぇ!!」


 現在俺は、左腕をスライム化させ、それを木の枝に絡ませてターザンの要領で木から木へと空中を移動していた。


 今俺がやるべきことは何かを考えた時、この俺が追放された原因でもあるこの能力について詳しく知ることだと判断した。そこでいろいろと試していくうちに分かったことがある。


 まず一つ目、体を変化させることが出来るのは体の一部分のみである。例えば左腕をスライム化させたときは他の部位はスライム化させることが出来ない。もし右腕をスライム化させたかったら一度左腕を元に戻さないといけないのだ。


 二つ目は変化させた体は変化元になった魔獣の能力を基本的に扱うことが出来る。例えばスライムの場合は体を触手の様に扱うことが出来るし、体の一部を切られても魔力があれば再生することが出来る。いやぁ…もしかしてと思って試したけどめちゃくちゃ怖かったなぁ……。


 そして最後、微弱ながら魔力が増えた気がする。魔獣を食べたおかげか、自分の魔力量がほんの少しだけど増えた気がする。これがスライムという低級の魔獣だったため、あまり変化を感じないが、上の等級の魔獣を倒し、それを食べればもしかしたらもっと魔力の量が上がるかもしれない。


「これ便利っちゃ便利だけど、体全体をスライム化出来たらかなり面白いのになぁ」


 もしかしたら出来るのではないかと一通り試してみたが、どうしても体全体をスライム化させることは出来なかった。体の一部を変化させることが出来るなら、頑張れば体全てを魔獣化させることが出来ると思ったのだが…どうやらそんなことはなかったらしい。


「まぁこの力があるだけでも十分…かっ!うおお、すげぇ!!」


 俺はスライムの腕を木の枝に巻き付ける。そしてその木の枝を支点にして上空へ向かって大きく飛び立つ。


 視界に映る一面の緑、こんなに壮大な自然を見たのは生まれて初めてかもしれないと思うほど、目に映る景色は綺麗で迫力があった。


「日本にもこんな景色はあったと思うけど、こっちの方がやっぱり自然の景色はすごいな。まぁ逆を言えばこっちの世界があんまり発達してないってことだけど…ってなんだ?」


 落下するまでの間自然を満喫していると、黒い影がこちらに近づいてきているのが見える。


「なんだあれ…ゴミか?…いやそんなことないし何かすごい速度でこっちに近づいてきてないか!?」


 どんどん大きくなる黒い影に俺の「これ絶対危ない奴レーダー」がビービーと警報を鳴らし始める。


「げっ!?」


 黒い影が、鳥類であることを確認することが出来たが、それと同時にこの黒い影とぶつかることは避けられないことも確認できた。


 俺は急いでスライム化させていた腕を接近してくる陰の間に挟み、クッションの代わりにする。


「ぎゃあ!?」


 ぶつかる直前鳥類が驚きの声を上げ、今にも目が飛び出そうな表情を浮かべる。そして急ブレーキをしようとしたのか翼を広げて勢いを殺そうとする。が、車は急に止まれないのと同じように、鳥も急には止まれないらしい。


「何でお前が驚いてんだよおおおおおおああああ!!」


 俺は驚いている鳥にツッコミを入れながら衝突し、そのまま地面へと落下していく。


「ってて……」


 俺は体をさすりながらゆっくりと立ち上がる。上手くスライム部分から着地したおかげで地面とキスせずに済んだのだが、スライムに弾かれたせいで軽く地面にぶつかり、体を少しだけ痛めてしまった。まぁ今日範囲内の痛みなのでセーフとしましょう。


「あっ、ていうかあの鳥どこ行った?」


 先ほど衝突した鳥、おそらく近くに墜落していることは確かだろうが...というかもしかしてだけど地面と衝突した衝撃でそのまま死んでたりするかもしれない。


「まぁひとまず辺りを探してみるかぁ」


 ガサガサと草を掻き分けながら、辺りを探索する。


「「あっ(ギャ)」」


 辺りを探索して、僅か十数秒。なんと普通に出くわしてしまいました。こんなにすぐにエンカウントするとは相手も思っていなかったのか、俺と同じ反応を同じタイミングでする。


「「……」」


 突然沈黙が訪れる。あんまり仲良くない人と街中でばったり出くわしてしまったみたいな少し気まずい空気が流れる。え、どうしよう。一応挨拶しといたほうが──


「ギャアアア!!」


 あっ、ですよねー。結局戦うことになりますよねー。


 

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