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お食事

 グルルルルゥ……


「えぇ?俺ちょっと前にご飯食べたはずだけどなぁ……」


 この森へ向かう馬車に乗ってすぐに軽くご飯を食べたつもりだったが、それだけでは足りなかったのか俺の胃袋はもっと食べたい、もっとお腹を満たしたいと俺に訴えかけてくる。


「まぁ初めての魔獣戦で結構な量のカロリーを消費している説は全然あるからね。お祝いもかねて何か食べるかぁ」


 俺は水魔法が使えるため旅の道中で水が無くなるという致命的な状況に陥ることはない。それに加えて水筒などを持たないことで空いたスペース分食糧を少し多めに持っていくことが出来る。←要修正


 つまり何が言いたいかというと多少は贅沢してもオッケーということだ。旅は長いし、いざとなったら道中にあった村の人に懇願してご飯を分けてもらおう。足にしがみつけばまぁ多少は分けてもらえるだろう。


 グルルルルゥ……


 いや、まて。やっぱり少しおかしい。


 俺は自分の身体が異常をきたしているのを感じる。確かに人間はお腹が減る、激しい運動をしてカロリーを消費した後なら猶更だ。それでも今のこの空腹感は普段のお腹が空いたというレベルを遥かに超えている。空腹感というよりも飢餓感と言った方が正しいくらいだ。


 ───美味そうだなぁ。


「っ!?俺は今何を考えて……」


 自分の手の中にあるスライムを見て?美味そう?……おかしい。俺の身体がついにおかしくなってしまった。旅始まったばかりなんですけど。


「ふぅ……ふぅ……」


 美味そう、食べたい、腹が減ったという本能と、スライムを食べるのはおかしい、それをするのはおかしいことだという理性が頭の中で大戦争を繰り広げている。そして──


「はぐっ!」


 どろりとした感触が口の中に広がる。特に咀嚼することなく俺はスライムをごくりと飲み込む。本能の前に理性という壁は脆く崩れ去った。尋常ではない空腹感に俺は耐え切れずスライムの残骸を獣のように食べ進めていく。


「はぁ…はぁ…」


 口元についた緑色の液体を拭いながら俺は先ほどまでスライムの残骸があったところをぼんやりと眺める。先ほどまであった尋常ではない飢餓感はいつの間にか無くなっていた。


「は、はは……まじで食っちゃったよ」


 自分がスライムを無我夢中で食べたことに乾いた笑いが込み上げてくる。どうしてこんな異常な行動に走ってしまったのか分からない。


「もしかして……これのせいか?」


 俺は服をペラリとめくり、自分のお腹に走っている紋章を見つめる。悪魔の印、俺がスライムを食べるという異常行動に走ったのはこれのせいなのではないか、というか十中八九これのせいだと思っている。


「適当な言い伝えだと思ってたけどまさか本当に悪魔の印なのかぁ?……っ!!」


 急にずきずきとした痛みが頭に走る。今までの頭痛の中で一番と言っても過言ではない痛みに、俺はその場で四つん這いになり、痛みに悶える。


「ぐぁ……うぅ……」


 おそらく1分もしない短い時間だっただろう。それでも1時間はあったのではないかと思えるほどに、とても苦痛な時間だった。今世紀最大の頭痛と言えるレベルには痛かったです。


「はぁ……マジで散々だよ──ってなんだ?この感触」


 俺は首元に自分の手を当てる。しかし、いつものような感触ではなく、ぷにぷにとして、それでいて少しひんやりとした感触が自分の首全体へと広がったのだ。俺は恐る恐る目線を下の方へと持っていく。


「ってなんじゃこりゃああああああ!?!?」


 俺は周りに魔獣がいるかもしれないこの妖魔の森で人生最高といっても過言ではないほどの大きな声を上げる。


 本来ならあるはずの肌色の右腕はそこにはなく、やや透明な緑色の触手がうねうね、うねうねとしている。それは先ほど自分が倒し、そして食したスライムのものに酷似していた。


「お、俺の右腕がスライムになってるううううう!?!?」



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