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初戦闘は定番のあれ

 ぷよぷよと地面を小さく跳ねる緑色の液体と固体の狭間に位置している生物。緑色の体内には丸い心臓のような何かがあり、それ以外は何もなく、ただ森の景色を緑色に変色させている。


 「初めての魔獣だ!しかもそれがスライム!いいね、チュートリアルにはうってつけだ」


 俺は剣先をスライムに向けて、ニヤリと笑みを浮かべる。今までのブルジョアな生活もとても充実していたが、やはりファンタジーと言えば魔物との闘いだろう。まぁこの世界では魔獣というらしいけど。


 まぁそんな細かいことは置いといて、俺は今かなりワクワクしている。これからは冒険者として第二の人生を送るのもいいかもしれない。そのための手土産としてこのスライムには犠牲になって貰おう。


「ふはは、かかってこいスライム!」


 ぽよんぽよんとただ跳ねるだけのスライム。僕に敵対の意思はないよと言っている風にも見えなくはない。ビジュアルが可愛い感じのため、そう見えてしまうが相手はれっきとした魔獣だ。油断してスライムに負けて死んでしまうのはさすがに王様も嘲笑するレベルで情けない。


 俺は気を抜かずに相手の様子を窺う。しかしスライムはただぽよんぽよんと小さくその場を跳ねているだけで、こちらに襲い掛かる様子は全く見えない。


 このままじゃただスライムと見合っているだけの変人になってしまう!


 誰に見られているわけではないが、今の自分の姿を神視点から俯瞰した時、すごいシュールな絵面が脳内に上映されたため、俺はとてつもなく居た堪れない気持ちになる。


「そっちが来ないならこっちから行かせてもらいますよぉ?」


 反応はない。まあ当然っちゃ当然だけど反応がないということは攻めていいってことだよね?まぁ反応があっても攻めるんですけどね。


「やあああ!!」


 俺はスライムに向かって疾走し、体を切り裂かんと剣を振りかぶる。


「はっやっ!……ぶべっ!!」


 しかし、スライムは俺の攻撃を難なく避け、さらにはカウンターとばかりに俺の腹部目掛けて突進してきた。


「っつつ……は、速くない?動きがすんごく速くない?」


 俳句っぽくなってしまったが、それぐらいにスライムの動きが速い。お腹から伝わる鈍い痛みとスライムの敏捷さに、子供が見たら泣いてしまいそうなほどのしかめっ面になってしまう。


「っぶない!!」


 先ほどと同じ速度で突進してしてきたスライムを見て、俺は地面を転がるようにしてその場を離れる。


「スライムだからって舐めてたら死ぬわこれ。普通にボコボコされるわこれ!!」


 痛みが引かないお腹をさすりながら、俺は警戒レベルを最大限にまで引き上げる。さすがにこんなところで死ぬのは嫌だし、何よりダサすぎる!


「はああ!」


 再度こちらに突進してきていたスライム目掛けて剣を振るう。俺の剣は、見事にスライムの体をスパッと切り裂き、スライムは空中で7:3の比率で分裂する。


「……げっ」


 地面に落下したスライムを見ると、丸い心臓のようなものがある大きい塊の方がうねうね、うねうねと動き始める。そしてなんということでしょう、切られたことが嘘のように元気にぽよんぽよんと跳ね始めました。


「なるほどね。その核みたいなものを壊さないと無限に復活し続けるって感じかぁ」


 俺の予想は間違っていないだろう。実際、先ほど切った核のない方のスライムはピクリとも動かなくなっている。


「さてどうしよっかなぁ」


 あの速い動きのスライムの核を綺麗に切ることが出来るかと言われると時間をかければいけそうという答えが浮かび上がる。しかし、時間をかけてしまえば集中力とスタミナ切れを起こしてスライムにボコボコにされる未来が見える。


 

「……あっ良いこと思いついた」


 そうだよ、ファンタジーと言えば剣だけじゃないよなぁ?


 にやりと俺の口角が自然に上がる。これならあのスライムを手も足も出させずに倒すことが出来るかもしれない。……元から手も足もないけど!


「さぁ来いよスライム!」


 俺の言葉が伝わったのかスライムはこちらに向かって突進してくる。一度切られたというのに速度に衰えがないのは流石魔獣と言ったところ。普通に当たったら痛いのでやめてください。


 ここだ!


「ウォーターボール!」


 スライムとの距離が近くなったタイミングで俺は魔法を使う。するとスライムは目の前に発生した水の球体の中に吸い込まれるようにして入っていく。そして水の中をふよふよと漂い始める。


「よっし、いっちょあがり!」


 作戦が成功し、スライムの水槽が出来上がる。俺は剣を持っていない方の手でガッツポーズを取る。勝ったな、風呂入って来る。あ、別にフラグとかではないです。


「それじゃ一思いにやっちゃいますか」


 俺は水の中で揺らいでいるスライムの核めがけて剣を思いきり突き刺す。核がパキリと割れると先ほどまで動いていたスライムがまるで糸が切れたかのように動きを止める。


「やった!ちょっと痛い思いはしたけどなんとか初めての魔獣狩りに成功だ!!」


 水魔法を解除するとべちゃりとスライムの体が崩れるようにして地面へと落ちる。しっかりと倒したことを確認した俺は剣を鞘へと納め、体全体で喜びを表現する。一瞬危うい場面もあったけど特に大きな怪我もなく倒せてよかった。スライムで大怪我とか笑い話にはなるけど本人的には全然笑えないからなぁ。


「にしても本当にスライムなんだなぁ」


俺は動かなくなったスライムの残骸を手に取る。あっちの世界にあるスライムと感触はほとんど変わらないな。あぁでもこっちの方がちょっとだけ水っぽいかな?


「っ!?」


 スライムのねばねばとした感触を楽しみながら緑色の液体をジーっと見つめていると、突然自分のお腹の辺りが熱くなるのを感じる。


「急になんだこれ!?」


 グルルルル……。


「……へ?」


 急に熱くなったかと思えば俺のお腹は何日もご飯を食べていないのかと思うほどに大きく鳴り響いたのだった。



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