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剣を持ったお父さんって怖いよね

「はぁ…いいお湯だったぁ」


 ゆっくりとお風呂を楽しんだ俺は、着替えをしてドライヤーに似た魔道具で髪を乾かしていく。いやぁ魔法って便利だなぁ。


 髪を乾かし終えた俺は夕食の時間まで自室でのんびりしようと浴場を後にする。が、廊下を歩いている最中慌てた様子の使用人に足を止められてしまう。どうやら俺のパッパことリドお父様が俺のことをお呼びらしい。


 そんなに慌てることあるかと思ったが、もしかしたら大変なことが起こっているのかもしれない。というかさっきの俺のお腹の紋章を見たメイドが「ルーク様が中二病らしいんです!」とか言ってたらさすがに数週間は引き篭もる自信がある。いや、この世界に中二病という概念はないのか……?うーんどうなんだろ。


 とりあえず呼び出しを無視するわけにも行かなかったので、俺は方向転換して使用人の後をついていく。


「失礼します。お父様……それとお母様。お呼び出しとは一体何についてのことでしょう?」


 パッパの自室に行くと何故かそこにはマッマことソフィお母様の姿もあった。え、何この疑似三者面談状態。俺が中二病なのがそんなにショックだったの?


「ルーク、早速では悪いのだが、お腹を見せてくれるか?」


 うわこれ完全にそうじゃん!絶対に引かれる奴だよ!!はぁ……部屋に引き篭もる準備を後で整えなきゃだなぁ。


「わかりました」


 俺はお父様の指示に従い、渋々服をめくってお腹、正確にはお腹に走っている紋章を見せる。


「っ!」


「……ルークその紋章はいつ頃から現れた?」


 え、なんで皆さっきのメイドと同じ反応してんの?もしかしてこれそんなにやばい奴なの?


 目で部屋をきょろきょろと見渡すと全員が驚きや悲しみの表情を浮かべている。この部屋で状況を理解できていないのは間違いなく俺一人だろう。


「これですか?えっと……詳しい日付までは覚えていないのですが、数年前突然現れたって感じですね」


「…やはりか───ああ神よ、どうして我が息子に……」


 え、ちょっと待ってほしいんですけど!?何でそんな今にも泣きそうな声を出してるんですかマイパッパ!?それにマッマもなんでそんな顔を伏せてるんですか!?頼むから状況を説明してくれぇ!


「えっと……お父様これは、このお腹にある紋章は一体何なのでしょう?」


「それは──悪魔の印だ」


「悪魔の……印?」


「そうだ。それは8~13歳の間に現れるものだ。その証を持つ子供は将来国に災いをもたらすと言われ、多くの場所で悪魔の子として扱われる」


 悪魔の子って……まじすか。


「もう少し早く気付けていれば……どうして今になってこんな……」


 お父様は頭を抱えながら愚痴を呟く。


 ふむ、これが悪魔の印……まぁ確かにそう言われてみればちょっと悪魔っぽい感じはするけど……でもそんなに悪魔っぽいかぁ?色味のせいであれかもしれないけどそんなに悪魔っぽいかぁ?


 俺はお腹の紋章をなぞりながらそんなことを考える。


「……もうこうなってしまったからには致し方がない」


 ガタリと音を立てながら席を立ち、こちらへと鋭い視線を向けるお父様。とてつもなく嫌な予感がする。出来れば気のせいであって欲しいけど……。


「えっと、お父様?」


「ルーク、すまない。これも国と伯爵家のためだ。安心しろ、痛くならないよう一撃で仕留めてやる」


 あっ、やっぱりそうなりますよねぇ。


 お父様は近くに立てかけてあった剣を手に取り、映画の効果音のような高音を鳴り響かせながら鞘から刀身を露わにする。


 ちょっとまずいぞこの状況!ど、どうする?このまま抵抗せずに死ぬのはまずないとしてどうする?何とか説得を試みるか?いやでも剣先をこっちに向けてる状態で「ちょっとタイム」と言っても止まってくれるなんてことがあるだろうか、いやあるはずがない。


 かと言ってこちらも武力で抵抗したらそれはそれで問題になるし、何とか逃げ切れたとしても犯罪者としての逃亡生活が待っているだろう。


 ふむ……つ、詰んだか?


カツカツという乾いた足音がどんどん近くなっていく。俺の第二の人生はこんなところで終わっちゃうのか……?


「ちょっとお待ちになってリド」


「……止めないでくれソフィ。私達が、伯爵家が今後もこの地位に居続けるためにルークには今ここで犠牲になって貰わなくてはならないのだ」


「お母……様?」


「確かにそのことについては異論はないわ。とても残念だし、悲しい事だけど致し方のない事だと理解してる。でもリド、伯爵家のことを考えるのならここでルークの命を奪ってしまうのは伯爵家にとって良くないことだと思うの」


「どういう意味だ?」


「今ここでルークが悪魔の子だと知れ渡ったら、数年もの間その事実を私達が隠していたのではないかと疑いが掛かってしまうということよ」


「……続けてくれ」


 お父様はこちらに向けていた剣を下ろし、お母様の方へと向き直る。


「ルークは既にラーファ様との婚約を発表している。それなのに今この段階でルークが悪魔の子だったと分かり、処刑したということになればあらぬ噂が立ってしまうのではないかしら?」


「ふむ……ではどうすればよいと思うソフィ?このまま隠し通すというのは些か難しいと思うが」


「行方不明になってしまったということにすればよいわ。幸い明日学園はお休みだし、訓練のため近くの森へ行ったところ行方不明になってしまった、とすれば不運な出来事として片付けることが出来ると思うの。ボロボロになった装備さえ置いておけば証拠にもなる。その上でルークは伯爵家から追放ということにすれば良いのではないかしら?」


 お母様の言葉を聞き、お父様は顎に手を当て、少し俯きながら思慮を巡らす。


 果たして僕の運命やいかに……。


 生唾を飲み、父の口が開かれるのを待つ。そして──


「ソフィの案を採用しよう。明日ルークを伯爵家から追放する」


 





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