モノローグ・時の形成者
ヴィニュ。私は皇帝となり、多くのものを得たが、失ったものも大き過ぎたようだ。
父を暗殺され、母を焼かれ、兄を見殺しにし、戦友を殺し、皇帝に復讐し、妻を失い、子を失くし・・・・・・そして、親友をこの手で殺めた。
私はこの帝国で最も権力を握る存在となったが、権力を強めれば強める程、私は孤独になって行く。
ヴィニュ、君だけだ。私を幼き頃から支え、こうして死に際まで一緒に居てくれたのは。願わくは、死後の世界や、来世でも共に居たいものだ。
ーはい。私はいつまでも貴方の側に居ます。
ーたとえ、生まれ変わったとしても、貴方と共に生きましょう。
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クロノス暦20年、フレア帝国初代皇帝であるナルメナ・ホルスは最も愛した妻に看取られながら、この世を去った。
時の形成者、フレイマー=フェニックスの生涯は波乱に満ち、孤独と失意に塗れ、そして復讐と愛情に生きていた。
四千年の時を経た後の世界にも名を轟かせる、大陸の再統一という偉業を成し遂げた皇帝として、英雄として、名を残した。
大河を渡り、砂漠を踏破し、大山脈を超えた。
圧倒的な武力でもって異民族を支配し、蛮族を征討した。
長く続いた動乱の時代を終焉に導き、旧体制の破壊を実現させ、新しい秩序を創造した。
その男の名は、フレイマー=フェニックス。
復讐から始まり、愛情を得て、己の正義を貫いた。
これは、憎愛に生きた古代英雄の、喜びと悲しみ、孤独に溢れた物語。