潤し男子#1 麦茶
仕事でミスをした。さらに連日の暑さもあってか、私は、社内の休憩所でぼんやりとしていた。
「なあ、そこのアンタ。大丈夫か?」
ふと、誰かが声を掛けてきた。知らない声だった。
ふと、見上げると、見知らぬ顔があった。
彼は誰だろう?
褐色の肌に澄んだ茶色い瞳。髪は短い金髪で、青いタンクトップと黒い短パンを履いていた。見た目は、元気の良さそうなイケメン、という感じだった。
彼は、人懐っこい仔犬のように上目遣いで私の顔を覗き込みながら、
「……お〜い、聞こえてるか〜?……なあ、本当に大丈夫か?……随分と渇いてるみたいだけどよ?」
と、言った。
「もし、渇いてんなら、俺が潤してやろっか?」
彼がそう言うと、私は、何を?、と思いながら首を傾げた。すると、彼は、私がおかしな事を言っているかのようにキョトンとした顔をしながら、
「……何って?そりゃ、アンタの心と体に決まってんだろ?」
と、言った。
にこりと笑う彼。太陽のような屈託のない、眩しい笑顔だった。
ハッと、気がつくと目の前には、ペットボトルに入った500mlの麦茶が置かれていた……。