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 コラリーに持ってこさせたパンを運ぶ。小さな店を開く。といっても、全部無償なんだけど。


「まあ、アミシアお嬢さま。こんなにパンをどこから」


 貴族の女性が声をかけてくれた。ああ、興味あるのかしら?


「ラ・トゥール家のパン工房のパンです」


「いいのかしら? 一庶民に貴族のパンを与えるなんて」


「ええ、今日は慈善活動の日ですし。平民をわけ隔てることなく慈愛で満ちた心で慈善活動することが目的ではないですか」


 貴族の女性は、ちょっと信じられないという顔をしたが。一応は納得した。


「まあ、まあそうね」


「さあ、みなさんゆっくりしていって下さい」


 私と侍女コラリーでパンを配る。クリスティーヌが診た患者たちが流れてきてパンを受け取ってくれる。


「アミシアお嬢様も慈善活動されるとは。珍しいこともあるもんですな」


 あはは、今日はじめてやったからね。当然言われちゃうわね。


「はい。私もなにかできることがあるはずだと思ったので」


「よい心がけですな」


 ははっ。なんかやっぱり少し馬鹿にされてる感じがするわ。でも、私は処刑されたあのときと変わったってこと少しずつ分かってもらわないとね。


 男性にはあまり受けないけれど、女性はけっこう持って帰ってくれる。


「これは、ラ・トゥール家の工房で? そんなに大きくって? 人数分用意するのは大変だったでしょう?」


「けっこうぎりぎりでした。数はそんなにないんですよ。来週もしっかりやれるように、時間と数量が課題です」


「おお、もうないのか。良い匂いが漂ってきたと思ったのに。残念ね」


 あ、ちょっとけっこうな大人数に取り囲まれている。やばい、なくなっちゃう!


 最後のパンを急いで並べる。


 ちょうどそのとき豪華な馬車が来た。やだ。すっかり忘れてた。私は、このあと王子と初対面を果たすんだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の周囲の人達の戸惑いを内心で笑い飛ばす描写が、読んでいて尊敬できました。今までの自分を変えるとき、周囲の反応が気になるものですが、その辺のリアリティがしっかり描かれていて、素晴らしか…
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