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 聖女クリスティーヌとリュカ王子の踊りの美しさで貴族達が息を飲む。いくら王子がクリスティーヌを無関心に思っていても、そこは王子のテクニックで人々を魅了するレベルのダンスだった。周囲は熱に浮かされて、大広間の中心の二人を見つめている。騎士ミレーさまは感動して泣いているし。私の侍女、コラリーとフルールも何故か悔しがった。


「ア、アミシア。いいの? リュカ王子はあなたに訴えているんですよ。クリスティーヌから早く解放してくれって」


「うーん。そう? でもこの休憩を挟んで、次の曲でもピアノ伴奏するし。あんなに見せびらかさなくてもいいのに」


 すると、フルールが閃いたと、私に耳打ちする。コラリーも聞き耳を立てる。


「アミシアさま。ここは、徹底的にドSにはドS対応で対抗しましょう。王子が聖女クリスティーヌとのダンスを見せびらかすのなら、アミシアさまはピアノでダンスよりも目立つんです。そして、王子のことは徹底的に無視して演奏家たちを沸かすんですよ。そうすれば、リュカ王子がアミシアさまをダンスに誘うときに熱も入るかと」


 ドSにはドSね。よし、じゃあ、それでいきましょ?


 お茶菓子を頂いて人々の談笑に混じっていると、私を称賛する声もちらほらあった。


「伯爵家の令嬢と言えば聖女のクリスティーヌさまだと思っていたんですけども。長女のアミシアさまはとてもおしとやかで慎ましく、それでいてエレガントでピアノの教養もある素敵なお方でいらっしゃるのね。ぜひ、うちの息子と婚約して下さらない?」


「へ?」


 すると、別のご婦人も「ぜひ、うちの息子を紹介したいわ」


「あ、あの、ちょっと待って下さい」


 なにがなんだか分からない。私、今王子しか眼中にないの。へ? 待って、やっぱり私、リュカ王子にしか興味ないんだ。ああ、なんであのドSのことが気になるのよ、私!


「ワインの回りが早いわね」と、厳かな衣装を着た男女が現れた。あれは! 国王と王妃。臨時の出席で会場は大いにざわついた。


 いつも王子の気まぐれで婚約相手を探す舞踏会。開催日時は毎回ばらばら。だから、国王も王妃も王子の遊びの一つぐらいにしか思っていないはず。なのに、今日になってどうしてここにいるの?


 さっき私に話しかけてきた婦人たちは早口でまくしたてた。


「今日国王と王妃が現れたということは、ついに 王子の婚約者が見つかったということなのかしら!」


 リュカ王子は両親である国王と王妃に挨拶している。それから、何故か振り向いた。うん? 私のこと見ないでくれるかしら? つられて国王と、王妃も私の方を見ているじゃない。そ、そして出たー! 王子の意味深な嘲り顔。


 やめてよ! 私を困らせたいのは分かるけれど、国王さまと王妃さまを使うのはやめてええ!


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