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「アミシア。俺は最悪の事態に備え、指揮を執らないといけない」


 そう会話していると、王宮上階から悲鳴が聞こえた。


「くそ。ゲストから怪我人を出させるわけにはいかない!」


 王子が駆け出す。私もお父さまが心配でついていく。そのとき、後ろのベンチの木陰から嫌な気配がした。振り向くと、そこには狼のような魔物が飛び出て来た。


 グルルルルル!


「リュカ王子さま! ここにもいるわ!」


 王子は私より先に駆け出していたので驚いて引き返してくる。でも、私と魔物の距離が詰まる。大きな魔狼は体長三メートル近くある。戦うしかない。


 両手で魔法を練る。火の弾ぐらいしか出せないけれど、特大のをお見舞いしてあげる。


「はあっ!」


 グギャアアア!


 狼の魔物は吹き飛んだ!


「やった!」


 だけど、その後ろにもう一匹いた。え、無理よ。今放ったばかりだもの。練るには時間が……。まずい、間に合わない!


「アミシアアアアア!」


 王子さま!?


 か、噛まれる! 


 目をつぶった瞬間、私は横に押し飛ばされた。バランスを崩して草に手をつくと、王子が盾になってくれているのが目に入った。


「ぐああ」


 やだ、王子の腕が長い牙にやられて出血している!


「リュカ王子!!!」


 助け起こそうとするとリュカ王子は私を心配して飛びついてきた。


「無事か?」


「私は平気です! それより王子さまの怪我の具合は!?」


 そう言いながら私はもう一匹にも炎を当てた。吹っ飛んだ魔物は全身が焼け、即死している。


 すぐにリュカ王子の従者たちが駆けつけてきた。


「王子! 武器も持たずに飛び出すなんて無茶を」


「わ、私のせいでリュカ王子さまが」


「アミシア。断じて君のせいじゃない! そんな馬鹿なことを言ったら、ギロチンにかけるぞ」


 こんなときに恐ろしい冗談やめてよ。さっきは必死で魔法を放ったけれど、今になって足が震えて怖くて涙が出てきたのに。ギロチンのこと思い出させないでよ。もしかして、これがリュカ王子のドSジョーク? でも、うれし泣きに変わっちゃうわ。私のことをかばってくれたのが嬉しくて。


 私をギロチンにかけたこの人が私を救ってくれた。頬を伝う涙が止まらない。


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