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「どうすれば、それほど妖艶な魔力が出せるんだ?」


 妖艶って!? 私、闇のオーラでも出しちゃってるの?


「あの、それは」


 肩を寄せ合っていたはずの王子が私の肩を突然つかんで迫ってくる。見下ろしてくる赤茶色の瞳が、夜闇に浮かんでルビーみたいに見える。急に接近してくる色白の頬に、ぷるんと浮かぶ端正に整った唇。わ、私ったらどこを見てるの!


「君を見ていると。惹きつけられるよ。ほかの女性にはないなにかがあるのかな?」


 不用意に手をつかまれ、指を組まれた。なにかを探るような手つき。ぐいっと手を引かれた勢いで私の身体は王子の元へと運ばれる。片手で私を抱き留め、私の小指にリュカ王子が噛みついた。


「痛っ!」


 王子は謝りもせず私の手をやっと離した。


「君が隠しごとをするからだ」


「し、してません」


 王子はニヤニヤしている。令嬢の手に噛みつくなんて普通の神経じゃない! だけど、冷静にならなきゃ。半魔族だってばれたらおしまいよ。


「してるな。君はダンスが踊れたのにピアノに逃げていた」


 は? そ、そ、そ、そっち???


「どうして隠した。アミシア。俺は君に舞踏会に参加してほしい旨を伝えたつもりだ。だのに、ピアノなんて」


「下手なピアノで申し訳なかったわ」


「そ、そういう意味じゃなくてだな。俺は君と踊りたかった。じゃあ、君は俺があの場で導かなかったらどうしていた? いっしょに踊ったか?」


「確かにダンスの自信はなかったけれど、ピアノで参加して何が悪いんですか? 返事のお手紙を差し上げたときは快諾していただけたじゃないですか」


 リュカ王子は不満げだ。私がピアノの特訓をどれほどしたと思ってるのよ。ダンスよりも倍の時間をかけてるのよ。まあ、この口論しているってことは私が魔族の血が混じっていることには気づいてないわね。


「そ、そうは言ったけどな。だ、だが、俺も君が参加するということはてっきり――いっしょに踊るのかと」


 まあ、急に勢いが萎んだリュカ王子、意外とかわいい? 


 月が高く昇っている。言い合ってみると時間が過ぎるのが早い。


「なら君に頼みたいんだが」


「何をでしょう?」


「君には今後も舞踏会に参加してもらいたい。ピアノ奏者として」


「それは光栄ですわ。その代わり、大事な指は噛まないで頂けます? 演奏に支障がでますので」


 すると、胡乱な目で見つめ返してくる王子。


「それは俺の愛情表現だ」


「はあ? 痛かったんですよ」


「では、君を困らせたいときはどうすればいい?」


 子供か! 


「殿下は常に私を困らせていますわ」


「本当か? なら良かった! 君が困ったり、怒ったりするところを見ると胸がどきどきしてしょうがないんだ」


 この、ドS王子……。


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