表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/88

67

 王子が上機嫌で戻ってくる。大広間に入るなり女性たちに囲まれ取り巻きが出来上がる。安定のプレイボーイっぷり。リュカ王子、わき目もふらずにこっちにやってくる。女性たちを振り切って。


「さっきはすまなかったね。……来い!」


 いきなり手をつかまれた! え? ちょっとちょっと! どういうこと! どこにつれて行くのよ! こんな大勢の女性の前で。ほら、みんな甲高い悲鳴を上げてるじゃない。


 そのまま王宮の階段を駆け下りる。そして、二人で中庭の椅子に座る。ダンスに飽きた貴族たちが休憩できるスペースになっている。


「リュカ王子、突然どうされたのですか?」


「さっき二人で踊ったのに、もうそんな他人みたいな話し方をするのか。まったく」


「いえ、さっきのダンス後、あなたが逃げたので。ああ、私とは距離を置きたいのね。そう思っただけです」


「なっ!」


 あらら、リュカ王子ってドSなのに案外照れ屋なのね。


「事実じゃないですか? 私はあなたにリードされて必死について行こうとしました。そして、終わるとすぐに逃げるように去ってしまったのはあなたです」


 リュカ王子は乾いた笑声でごまかす。


「君にはかなわないな。夜の庭は気持ちがいいだろ?」


「ええ」


 つまり、ごまかしたいのね。


「君がいると、今まで感じたことのない自身の動悸を感じる」


 そして、再び私の手に上からそっと手を重ねる。や、やだ。こっちまでどきどきしちゃうじゃない。この人、こんなにロマンチストだったの?


 心なしか、流し目が優しい。人を小馬鹿にしたような笑みも潜めている。あれも偽りの笑みだとでも言うの? この人、内心では私のこと小馬鹿にしているにきまっている。


「どうして不安そうに眉をひそめる? 君はいつも怒っている顔をしている方が、俺好みで素敵だ」


「なんですって?」


「それ、それだよ」


 う、うわー、はめられた。いや、怒ってなんかないわよっ。


「はははは。もしかして悪女も泣くのか?」


「誰が泣くですって?」


「いや、すまない。つい口が滑った。君があんまりにもいじめられたい子猫のようでな」


 もう、好き勝手言わないでもらいたいわ。


 夜風が冷たくて気持ちいい。だけど、リュカ王子と肩を並べて座って、いつまで経ってもくつろげる気がしない。


「もたれかかってこないのか?」


「そんな失礼なこと、王子にできるわけがありません」


「恐れ多いと? 君には恐れるものは何もないだろう? では、命令すれば従うか?」


「え?」


「もたれかかってこい」


「遠慮しときます」


 すると、リュカ王子は自分で言い出したことなのに、ツボに入ったように笑いだした。


「ほんとに君は。いいね。やっぱりそういうところがほかの貴婦人たちと違う」


「まだ、未成年ですけどね」


「もうすぐ成人だろう? 不思議だ。未成年とは思えない。美しく怪しい魔力を感じる」


 ま、魔力って今言ったの? まさか私、正体がばれちゃった?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ