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 はじめての舞踏会。王宮での開催とあって招かれるのは貴族ばかり。それも、王族と親交のある爵位の高い身分の家から案内されていく。馬車を留めてから混み合って十五分も待たされるとは思わなかった。


 中庭に通されたと思ったらエントランスまで並んでいる。伯爵の娘の肩書では王子に挨拶されるまで三十分はかかりそう。なんて思っていると、クリスティーヌが我先に王子の傍に駆けていく。どういうこと? 私とお父さまは待たされているというのに。しれっと抜け駆けして。


 ここでいつものお父さま節「早く王子に謁見しておいで」と急かしたお父さま。


 なんだ、お父さまの計らいなのね。聖女なら順番を守らなくても許されるわけか。ほかの貴族も嫌な顔はしていないみたいだし。


 まあ、そうよね。女神に一番近いところにいる人間よりも上の存在。ああやだ、絶対に阻止しないと。クリスティーヌが表は優しくほんわかした笑顔で、裏はドヤ顔、ゲス顔決めまくってるっていうの、みんな気づいてよね。どうして姉の私だけこんな気苦労しないといけないのよ。


 遠くてよく見えなかったけど、ようやくリュカ王子が見える距離に来た。エントランスに入ると、人混みで再び外へ押し返されそうになる。国中の女性が集まっているんじゃない?


 人々は話し合っている。王子にも聞こえるのではないかという大声で。


「舞踏会では毎回婚約者を探しているそうよ。リュカ王子は気が変わりやすい人だから、毎度選びきれないみたいだけれど。こういうときこそ爵位が有利よ」


 普通の王族ならそうかもね。だけど、リュカ王子は一筋縄ではいかないわよ? 貴婦人を弄ぶことなんて日常茶飯事だろうから。


 それに、実質は恐ろしい人でもある。最近の新聞記事には、辺境の森を魔族もろとも焼き払ったとか載っていたし。お母さまの住んでた森って、今どうなっているのかしらね。王子なら既に焼いてそうで怖いんだけど。お母さまがもしお父さまと結ばれることなく、森でひっそりと暮らしていたら、焼かれていたのかもしれない。


 私も危ないじゃない。いつ半魔族と気づかれるか。その時点でゲームオーバーね。王子なら裁判もせずに魔族を処刑する! いや、私なら大丈夫よ。クリスティーヌがバレないんだから。


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