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 ピアノ発表会には王子も来ることが分かった。あの王子はほんと気まぐれ。特定の貴族とだけ交際するのではない。色男だとか、面食いだとか言われている。


 でも、私のやることはピアノの伴奏をいつも通りやるだけよ。だから、王子が見に来るのは歌手であるクリスティーヌの方じゃないかしら。まあ、いつも通り準備しておきましょう。ララ先生が仲良くしてくれようとしてくれまいと毎日花瓶にチューリップを生ける。実は習慣化していたのよね。だって、先生はクリスティーヌばかり褒めるから。もう誰のために生けてるのか分からないけれど、今日も練習ね! って自分で張り切るために生けている。


 大広間では立食もできるようにするらしいから、テーブルが運び込まれる前に最終の個人練習をしといた方がいい。


 鍵盤を開いて息を吐く。今夜が本番だからってなにも緊張することはないわ。私がミスしても来客はクリスティーヌの歌を聞きにきているだけよ。ああ、だめだめ。こんな弱気じゃ。ミスしないようになったじゃない。あとは、堂々と弾くだけ。と、指を鍵盤にかけるときに何か光っているものに気づいた。


「え、やだこれ。針じゃない!」


 シャンデリアの反射で分かった。鍵盤の隙間から飛び出ている。指をかけていたら刺さっていただろう。まさか、毒でも塗ってるの? 


 針を回収して自室に引き返した。


「アミシアさま。そろそろ夜会用ドレスにお着換えください」


「……分かったわ」


 コラリーが私の青ざめた顔を見て血相を変える。


「どうかしましたかアミシア」


「コラリー、お願いがあるの。クリスティーヌの侍女のフルールを呼び戻してきて。私、とんでもないことをしてしまったわ」


 私だけじゃなくフルールも狙われるはずだ。


「フルール? ああ、あの子なら今日、解雇されましたよ。なんでも、クリスティーヌさまの侍女になってからは、よく欠勤が続いたとかで」


「そ、そう。私のところで再雇用するわ。連絡して」


 ああ、とりあえず無事でよかった。仮病でも使って休ませたかいがあったわ。


 なんとかして、クリスティーヌが針を仕込んだ犯人だと断定できないかしらね。針に毒が付着してるかどうかを調べないと。


「コラリー、薬屋で成分を調べてきてもらいたいものがあるの。至急お願いできるかしら」


「分かりました。アミシアさまの晴れ舞台を見ることができないのは残念ですが、急ぎなら行ってきます」


「頼んだわよ」


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