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「あのクソ女。魔力が目覚めたからって聖女になれるとでも思ってるの? 私が人間ごときに馬鹿にされるなどあってはならない。発表会で私は王子の心を手に入れるのよ。あの女に邪魔させない。魔王様、早くあなたにこの国を捧げたい……」


 そんな独り言がクリスティーヌの部屋の前から聞こえた。住み込みの侍女以外が帰宅した深夜のことだった。私は開かずの間を見に行くところだったんだけど、こんな荒々しい文言が聞こえたんじゃ、クリスティーヌの部屋で耳を澄ますしかない!


 聞き耳を立てたとたん、部屋は静まり返った。もしかして、感づかれたかもしれない。相手は魔族だということを忘れかけていた。あの子の目的はこの国の滅亡なんだ! 心臓の高鳴りを押さえられない。自室に引き返してこのまま眠りについた方がいいわね。忍び足で、だけど素早くその場から離れた。


 潜入させたフルールも、そろそろ引き上げさせましょう。近いうちに間違いなくクリスティーヌが動く! そう直感した。


 思ったより自室に逃げ帰るのは骨が折れた。背後に気を配りながら、素早く、でも足音を立てずにだもの。部屋にたどり着いたときには冷や汗をかいた。ずっと背中を誰かに見られている気がするの。あの子の魔力が増幅している? 私が魔力を開化させたように、あの子の魔力も成長しているのかもしれない。


 そもそも魔族って、この国ではほとんど見かけない。何故って、見つけ次第討伐対象だから。そうなったのも、魔族が魔物を使役して攻撃してきたからなのよね。中にはいい魔族もいるんじゃないかって話も聞いたことはあるけれど。そんな話はタブーになっている。なんでも、貴族が魔族と結婚しようとしたときに、魔族側の第三者が怒って人間を攻撃したとかなんとか。まあ、噂程度だから、そんな色恋沙汰があったのかどうか信憑性はないけれど。


 確定していることは、クリスティーヌが魔王崇拝者の悪い魔族だってことね。


「ほんと、魔王を撃退するのが聖女なんじゃないの? それが魔族って、この国の行く末が恐ろしいわ。というより、一つ屋根の下にいる私の身だって、相当危険なんじゃない? この状況」


 ほとんど眠ることができなかった。何度も戸締りを確認したけれど、隙間風を感じたり、何もない暗闇にぼうっと顔が浮かび上がりそうな気配がして……。考えすぎだといいんだけど。


 寝つきが悪かったけれど、なんとか起きることができた。生きてるーっ!


 私が王子やミレーさまに婚約しなければ、命を狙われることもない? のよね。まあ、ミレーさまはクリスティーヌとほぼほぼ婚約確定だし。ミレーさま、たまに抜けてるからあっさりクリスティーヌの傀儡にならないか心配なのよね。それから、ドS王子。噂だと誰彼構わず遊んでるらしい。クリスティーヌと仲睦まじくなるのも時間の問題かもしれない。



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