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 お父さまが催してくれたパーティーは、久しぶりということもあって普段見慣れない男爵家から侯爵家までさまざまな人が来賓した。私と面識がなくてもお祝いの言葉を投げかけてくれる。


「お嬢さま。此度は魔力開化おめでとうございます」


「ありがとうございます。遠いところからお越しいただいて。道中、無事に過ごされましたか?」


「ええ、街道に出るという噂のゴブリンにも遭遇することなく。あんなのは噂程度ですわね」


 私のやり取りを見ていた私のことをよく知る貴族たちがひそひそと会話しているのが視界の隅に入った。


「伯爵令嬢らしくなってきたんじゃない? アミシアお嬢さま」


「というより、どうしちゃったんでしょうね。人ってこんなに変わるものなんですね」


 当然、変わらなくてどうするのよ。


 クリスティーヌは最初こそどんなものか見てやろうという魂胆で私のパーティーに来ていた。私宛に届いたプレゼントの山を見て絶句する。


「お、お姉さま。体調がすぐれないので、申し訳ありませんが、部屋に戻ります」


「あら、クリスティーヌ大丈夫? 回復魔法って自分には使えないの? 不便な魔法ね」


 クリスティーヌは歯噛みして早々に引き上げていった。


 後でプレゼントを開封するのが楽しみになっちゃう。ドレスだったらいいな。まあ、今日は桃色のドレスにしてかわいいこぶってるんだけどね。たまには、違う色も着られるってところを見せつけないと。


 紅茶とケーキを堪能し、あっという間に夕方になった。


「来客の貴族たちに魔法を披露してやってくれ」と、お父さまが無茶ぶりをしてきた。


「お父さま、いくらなんでも」


「そうだな。火は危険だ。そうだ、花火ならどうだ? 応用でできるだろう」


「応用って。いきなり言われても」


「お前ならできる。なんたって……」


 お父さまが何故か口ごもるが、微笑んでこう告げた。


「お前は母さんの子だからな」


 嬉しい。私、頑張るわ! いや、頑張れるって言った方がいいのかしらね。


 日も落ち始めて、一番星が昇る。できるだけ高く空に花火を打ち上げる。


 花火の音に驚いて人々が空を見上げる。あ、いきなり上がっちゃって私も驚いた。


「うん、やればできる」


 自信がついた。次々上げてしまおう。手を空にかざして花火をイメージする。大きいってわけではないけれど、庭の上空に小さな花がたくさん咲く。音につられて引きこもっていたクリスティーヌが駆けてくる。あなたにはこんな芸当できないでしょ?


  そう思った瞬間、恐ろしいことが起こった。庭の草木に火が燃え移った。いや、そんな馬鹿なミス、私だって想定して遠慮気味に小さい花火を打ち上げているのに、起きるわけがない。


 クリスティーヌの機転の速さには息を巻く。


「恐れ入るわ。放火したのね?」


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