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 危うく火事になるところだったわ。というか、あれは火事ね。危険すぎて屋敷内では全然役に立たない魔法だわ。戦場に行けば別なんでしょうけど。でも、戦場で私が戦うなんて想像できないし、真っ先に死ぬと思うわ。


 ミレーさまが帰路に着いた後、お父さまに呼ばれたので部屋に向かう。


 魔法の使い道をあれこれ考えながらクリスティーヌの部屋の前を通った。


 ガシャーン!

 バターン!

 パタパタ。


 あー、やってるやってる♪ 花瓶でも割ったのかしら?


「お嬢さま! お怪我はっ」


「ウルッサイワネー!」


 何今のクリスティーヌの声? 人格変わってるじゃない。怖いわー。


「怪我なんか気にしてる場合じゃないでしょ! こんなの回復魔法ですぐよ。だいたいね、あの女がこのタイミングで魔法を使えるようになるなんて。どういうことなのよ!」


 バリーン!


「お嬢様、お気を確かに! ま、窓は危険ですのでおやめください!」


 クリスティーヌの侍女も大変ね。っていうか、窓は駄目でしょ。下に誰かいたら大変なことになるじゃない! フルールをさっき廊下で見かけたから、クリスティーヌが暴れてるって忠告してあげよう。仮病でも使って休みなさいって。


 クリスティーヌが癇癪持ちだって知ることができて良かったわ。私もそうだったけれど今は違うわ。「聖女がなによ! 魔法がなによ!」って怒ってた自分が恥ずかしいわ。だけど、この子を怒らせるのは楽しい。


 魔法さえあれば、誰も私とあなたを過剰に比べたがる人はいなくなるもの。


「来ましたお父さま」


 お父さまが怒るつもりで私を呼んだわけではないと思う。


「おお、アミシア。まあ座れ」


 お父さまの部屋では立たされることが多かったから、ソファーを勧められるとは思わなかった。お父さま、私を見直してくれたのかしらね。


「先に言っておくが、屋内で魔法を使うのは禁止だ」


 その口調は怒っているそれとは異なる。とても優しい声音だ。


「もちろんそうします。まだ扱いきれなくてごめんなさい」


「そうかそうか。いや、まだそうなのだろうなと思ってな。それで悩んだんだが。何でも早いに越したことはないと思ってな」


 お父さまが紫のリボンのついた箱をくれる。


「お前にプレゼントだ」


 プレゼント? わざわざ呼び出して? 


 何が入っているんだろうという好奇心と、お父さまから特別視されたことの喜びから胸が高鳴った。


「うわあ。お父さま、これとても素敵です」


 魔導士のローブじゃない。紫色でところどころ、宝石もついている。これは、ドレスの上からも羽織ることができる大き目のサイズ。魔女っぽいけど。お父さまの中では私はまだ、魔女みたいな女なのね……。でも、これは進歩よ。


「試着して見せてくれないか?」


「――喜んで」


 私は勇み足でドレスを手にした。自室で着てみると、赤いドレスの上だとあまり合わないので黒いドレスと合わせてみた。うん。紫と黒だと合いそう。それに、ちょっと大人っぽく見える。鏡の中の自分が優しく笑いかけてくれる。


「ここまで、ほんとうに順調ね。王子にも殺されていない。ミレーさまはクリスティーヌと婚約予定だけど、婚約したわけじゃない。私はまだ聖女ではないけれど、魔力を得た」


 何も悪いことは起きない気がする。でも、油断は禁物。


 お父さまの部屋に舞い戻る。


「お父さま、見て下さい。私、こんな素晴らしいローブを頂けて……」


 なんでだろう、ちょっと涙ぐんでしまう。


「明日、お前のためにパーティーを開こうと思う。魔力開化のお祝いに」 



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