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 ほんと、意味が分からない。お父さまが資金をやりくりし、国内各地の街道に一メートルほどの祠を建立した。台座に女神を模した像が設置されて、大理石の屋根までついているそう。


「まあ、私が反対したところで、女神さまを敬う気持ちがないのかって怒鳴られるだけなんだけどね」


 お父さまを立腹させる方法はいくらでもあるのに、制止する方法はなかなか見つからない。


 部屋で一人ごちてふて寝していると、侍女コラリーがやってきた。


「騎士ディオン・ミレーさまがお見えになりました」


「クリスティーヌに会いに来たんじゃなくて?」


「先にプレゼントが届いております」


 ピンクで包装された箱が、次々私室に運び込まれる。試しに一つ開けてみると、くまのぬいぐるみが入っていた。目の部分はサファイアだ。


「まあ! かわいいけど。クリスティーヌ宛ての間違いじゃない?」


 ちょっと、かわいすぎる気もするけど高価な品よ。


「クリスティーヌさまにもプレゼントは届いておりましたね。人が入っているんじゃないかという巨大な箱が一つでした」


「うわ、なにそれ」


「クリスティーヌさまのお部屋に運び入れるのが難しいので、大広間でたった今開封するそうですよ」


 嫌な予感がして私は部屋を飛び出した。今まさに搬入中で、扉に箱の角をぶつけた召使いたちがお父さまに叱咤しったされている。


 なに、あれは? クリスティーヌがミレーをそそのかして、ついに魔道具でも購入した? 人を呪う鏡? それとも、あの大きさ……まさかギロチンとか? ひ、いやああああああああああ!


 ミレーが私に会釈した。


「アミシアお嬢さま。こんにちは。ご無沙汰しております。プレゼントは気に入ってもらえました?」


「ええ、ありがとうございます」


 私はドレスをつかんで作法通りにかがむ。ミレーは、居ずまいを正して私の手の甲に軽くキスをした。え、不意打ちでどきっとしたわ。なんだろう、ちょっと手の甲がむずがゆい感じ。今までこんなことなかったのに。一瞬、手が温かくなった。もしかして、これ魔力じゃないかしら。


「ミレーさま、あ、お姉さまも!」


 クリスティーヌが飛び跳ねてミレーさまの肩につかまる。はしゃぎっぷりが痛々しい。私はキスされた手を引っ込めるしかなかった。すると、手の甲から熱が潮の引くように遠のいていった。


「ミレーさま。誰彼かまわずお手を取ってキスをしては大変なことになりますよ。あなたのおかげで私は聖女になることができましたけど。聖女になる覚悟があるかどうか分からない女性が突然聖女に目覚めたら、ミレーさまが責任を取らないといけませんわ」と、ベタベタくっつきながら私を煽った。


「私はいつでも聖女になる覚悟をしてるわよ」


 プレゼントの搬入を見届けたお父さまが来た。


「これ、クリスティーヌ。あんまりはしゃぐと品格が失われるぞ。ほら、お姉さんを見習いなさい」


 お父さま、珍しく褒めてくれた。クリスティーヌが怒りでちょっと震えているみたい。いい気味。



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