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「クリスティーヌさまは見かけによらず侍女には厳しいと聞きます」
「だから、あなたにしか頼めないのよ。そのことに気づいているのもこの屋敷では恐らくあなただけ。だって、あの子はいつも猫をかぶっているんだもの。私が疲れる原因が分かるでしょう?」
「コラリーでは駄目ですか?」
「コラリーを派遣したら私の差し金だって分かっちゃうじゃない。だから、あなたには一芝居打って欲しいのよ」
フルールの否定も肯定もしない無表情。これならいける。クリスティーヌもこの子の顔から何を考えているかなんて分からないわ。
「クリスティーヌから何かもらったりしないでね」
まあ、クリスティーヌが侍女にプレゼントなんて気の利いたことをするとは思えないけど。
「と言いますと?」
「私がいいものをあげるから」
クリスティーヌの侍女としてこの子を送り出す前にお腹を満たしてあげなくちゃ。
「お茶でもどうかしら。ケーキも用意するわ。いっしょに食べましょう」




