23
寝つきが悪く深夜までおきていたこともあり、昼前に起き出して遅い朝食を取った。クリスティーヌはとっくに朝食を済ませて部屋で歌の個人練習をしているそう。
「最近よく習い事に励んでいるな」
お父さまと朝食を取った。昼も近いというのに、待っていてくれたようだった。
「はい。私も機会があれば聖女になりたいので」
しまった。まだ半分夢の中にいるみたいで素直に答えちゃったわ。
「お父さま。気を悪くしないで下さい。私、クリスティーヌの聖女の座を狙ってるわけじゃないんです。法律で聖女は複数人いても問題ないはずなので。クリスティーヌ以外に聖女を名乗る貴族の女性が現れるかもしれないのなら、私がと思って」
お父さまは、あっけに取られている。そこまで考えたことがなかったのだろうか。
「お、お前とクリスティーヌが。姉妹で聖女に?」
お父さまがもう食事を残すという意味で、フォークとナイフをそろえて置く。
「ごめんなさい! 私にはまだ早かったですよね」
お父さまの口癖の「お前にはまだ早い」が飛んでくる前にこちらから謝った。
「なれるものなら、やってみなさい。私はクリスティーヌという奇跡に一度出会っている。二度も奇跡が起こるものか分からないが」
お父さまが許してくれた! でもクリスティーヌの奇跡って何? お母さまとクリスティーヌがそっくりってこと? 散々聞かされてきたけど、奇跡と呼ぶほどに似ているの?
「お嬢さま、お二方のご来客があります。お嬢さまは朝食中だとお伝えして、応接室でお待ちいただいております」
侍女コラリーの報告を受けて、私もさっさと食事を済ませた。
「お父さまのお客さまじゃなくって?」
「はい、アミシアお嬢さまにお礼を言いたいと」
「二人とも?」
「はい。一人はパン工房の職長です。この間のチャリティーのパンを頼んだときの職長です」
「待って。二人いっしょにお話しはできないから。とりあえずドレスに着替えるの。急いで手伝って」




