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「アミシアお嬢さま! また会えて嬉しい限りですわ」


 魔法の先生であるクロエ先生は屋敷に来るなり、私に握手を求めた。私より少し年上の若い先生で社交界にも出入りしている。白に近い金髪が美しく後頭部で結われている。


 以前はクリスティーヌと私の二人の先生だったけれど、クリスティーヌはいつの間にかクロエ先生をクビにしていた。相性が悪かったんでしょうけど。回復魔法以外も使えることを見抜かれたくないのかもしれない。


 ちょっと待って。クロエ先生ならクリスティーヌが魔族だってことを見抜けるかもしれないわね。うーん、でもその話を持ちかけるのはもう少し先ね。


 魔法の授業は屋敷の庭でやることになった。昼の空が澄み渡っていて気持ちがいい。今日みたいないい天気でよかった。これなら上手く伝えられるかしら。


「先生、私。ずっと黙っていたんですけど。魔力がないんです」


「まあ」


 先生をがっかりさせてしまったかしら。雇用形態を伝えるときにいっしょに言うべきだったんだけど、黙ったまま今日までずるずる来てしまった。


「それで以前は休んでばかりだったのね。大丈夫よ。魔力がない子も私は教えてきましたから」


 ひとまず断られなくて良かった。


「先生。魔法の才能ってあると思います? ありますよね。できない人はいつまでたってもできないのかな……」


「いいえ。この世界には空間に魔力が漂っています。体内から魔力を生成して魔法を使うのが一般的ですが、これができない人が多いんです。貴族の方は魔法がなくても生活に困らないので特に自分の身体をコントロールするのが難しいだけですよ」


 魔法は音楽よりも難しいわね。自分で自分をコントロールすることは難しい。魔法に限らずだけど。以前はお父さまがクリスティーヌに洋服を買っているのが羨ましかった。お父さまにわがままばかり言ったわ。物欲や嫉妬なんかも抑えるのは難しいもの。


「本当に練習でできるのかしら? その、なんていうか過酷な修行みたいなのを積まないといけないんじゃないかしら?」


「あまり落ち込まないでアミシア。まず、息を吸ってお腹に空気を送ります。この練習を続ければ体内から魔力生成が難しいかどうか分かります」


「空気を吸うのよね」


「はい、おもいきり」


 すううううううう。


「ゆっくり吐いて」


 はぁぁぁ。


 これを何度も繰り返したけど何も起きない。


「少し緊張してるのかもしれないわね」


「それで外でレッスンなんですね」


「ええ、気持ちがいいでしょ?」


 そう言えば外にあまり出てなかったわ。ピアノのレッスンをして、クリスティーヌと顔を合わせないように自室にこもって。前みたいにドレスを買い占めにいくと、悪い噂も立ちそうで怖いし。


「アミシア。最近は買い物に行かれてます?」


「いいえ。ピアノと歌のレッスンがあるので」


「あら、私の授業以外も受けていたのね。それは疲れますよ。気分転換に買い物に行かれては? あ、そうそう。スイーツなんかいいですよ。この前新しく出店されていたケーキ屋のイチゴのショコラが美味しかったのでお嬢さまも是非立ち寄ってみては?」


 そうね。レッスンを休む日は出かけようかしら。


「次は空間から魔力を取り込む練習に切り替えましょう。あなたはきっと、このタイプだと思うわ。大丈夫、魔力がないのは普通のことよ。空間には魔力の元がたくさん漂っているの。そこから力を借りるのです」


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