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「はっ……」


 我に返る。


 横長の椅子に腰かける人々が大勢いる。ここは教会? 週に一回の集会。え、どういうこと。私はさっきまで処刑場にいたはず。やだ、やめて殺さないで。目をつぶる。怖い。痛い。やめて、お願い!!!


 バサッ。


  指先を滑るざらざらした背表紙の凹凸の感触。

手から聖なる書を取り落とす。


 ここはどこなの? 私は生きているの? おかしい。た、確かにあの恐怖や痛みは本物。私、どうしてこんなところに。慌てて、聖なる書を拾いあげようとしてやめる。息を整える。


 落ち着くのよ。これはきっと、なにかの間違い。もしくは、夢? 私は死んで天国に行く途中なのよ

きっと。だから教会で試されるんだわ。

 いや、でもなんかおかしいわよ。集まっている人たちは町の人たちで顔見知りも多い。貴族もそこそこ集まっているし。やっぱり週に一回の集会に間違いないわ。


 夢だとしてもましなほうじゃない。私は私の人生を振り返っているのよ。この、誰からも愛されない人生をね。でも、せっかくの夢なら楽しんでやるのも悪くないんじゃない? そうよ、もう一度死んだんだから怖いものなんかないじゃない。


「アミシア・ラ・トゥール。何をしている。また、この教会で場を乱そうと言うのか」


 パイプオルガンの演奏者も、指を鍵盤にかけてためらっているようだし。遠巻きに町人たちが私の派手な赤いドレスを指差してざわめいているのも見えるわ。


「伯爵令嬢だかなんだか知らないけれど、無作法ね。今日も賛美歌を歌わないつもりかしら?」


「ラ・トゥール伯爵家のご令嬢ですよ。まあ、あの真っ赤なドレス。神聖な教会で目を引こうとして。場違いじゃないかしら」


「貴族と言っても伯爵家でしょ? 田舎の貴族ね。大した金持ちじゃないのよ。屋敷の中に聖堂を建てる金がないか、神父様も呼べないんでしょうよ」


 酷く言ってくれるじゃない。今、私はわざと聖なる書を滑り落としたのよ。そう、これはいつもの私の動作。だから、何を言われても怒りはしないわ。だけど、今までみたいにただ嫌われるつもりもないわ。


 ほんとに生き返ったみたいね。息をすると肺に空気がたまるし、教会の荘厳な雰囲気と早朝ということもあって少し眠気を感じたり。私は、眠ってるわけじゃなさそう。試しに指で自分の手の甲をつまんでみてもちゃんと痛みを感じるんですもの。


 こうなったら、好き勝手に生きてやるわ。


 私は、私を幸せにする。おそらくだけど、この夢みたいな現象。きっと、私の二回目の人生だから――。


 無言のままに聖なる本を拾い上げると、年老いた神父と目が合う。教会の空気を乱したことを咎めるような視線を感じる。


「申し訳ありません神父様。本日の賛美歌の前に祈りを捧げさせて下さい」


 教会の中央で聖歌隊を従えていた神父が驚く。


 そうね、無理もないわよね。私はここじゃ鼻つまみ者だもの。場違い? 傲慢? それとも、女神様を敬う気持ちの欠片もない背徳者とでも思ってるのよね? そうでしょう? いいわ。私が見せてあげる。聖なる書なんて必要ない。私は誰よりも女神さまを信仰しているところを見せてあげようじゃない。


 本は閉じたまま胸に抱いて、神父様の蒼い瞳を見据え、聖なる書の一節を暗唱する。


「大いなる女神イシュリアに我らに感謝します。夏に種をまくことができることを。太陽の光と、枯れることのない川。母なる大地に感謝します。日々の行いを悔い改め、父と母に御心を捧げます。いかなる魔がこの地に舞い降りようとも。女神イシュリアとともにあらんことを」


 教会内でどよめきが巻き起こる。誰も静かにしなさいとは言い出さないほど、人々が心をかき乱されているのが手に取るように分かった。


「暗記してるぞ。教会にもめったに顔を出さなかったのに」


「どうなってるの? たまに来たと思ったら祈りなんてくだらないってわめき散らしていた人でしょう?」


 好きに言わせておいた。私は、そっと息を吐き出す。やっぱり生きている。これは夢なんかじゃない。


 今までは教会の大切さとか、貴族としての振舞い方とか、おろそかにしていたわ。みんなから嫌われているのが分かっていたから。嫌われるならとことん嫌われてやろうとまで思ってたぐらいだもの。でも、今度はあのときみたいにはならない。


 もう、二度と処刑されたりしない!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が強い意志を持っていて、二度目の人生の第一歩を力強く踏み出した姿が格好良かったです。最初の戸惑いも自然で、スムーズに主人公の心情を慮ることも出来たのがよかったです。 [一言] 主人公…
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