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「さすが聖女様」


「いいえ、ミレー様がいなければ今ごろ私は死んでいたかもしれません」


 二人で仲睦まじく見つめ合ってるわ。聖女クリスティーヌと騎士ミレー、うーん。お似合いね? 魔力があれば私もミレーのキスを受けて聖女に目覚めたのかしら? いいわ、やってやろうじゃない。魔法を勉強するわ。そして、必ず私も聖女になってみせる。本物の聖女がどちらか、ミレー。あなたに選ばせてあげる。


 ブドウ園から引き揚げた私は侍女コラリーに宣言する。


「コラリー。私――聖女を目指すわ」


「はい??? アミシアさまがですか」


「なに、文句あるの?」


 コラリーが涙ぐんでいる。


「アミシアさまが聖女さまになられるのなら、私嬉しいです。きっと、素敵な聖女さまになられます……」


「ちょ、ちょっと泣かないでよ。どうして? まだ、思ったことを口にしただけなのに」


「アミシアお嬢さまが魔力がないなんておかしいですもの。クリスティーヌさまばかりかわいがる伯爵さまを見るのは私も辛いのです」


「え、ほんと?」


 そうよね。コラリーは最後まで私の味方だった。私がクリスティーヌを階段から突き落としたとほかの侍女が信じ切って周りが敵だらけになったときも、ずっと支えてくれた。でも、どうして?


「お嬢さまのためになにかできることはございますか?」


「そうね。ピアノのララ先生は歌も教えてくれるのかしら? 聖女は歌もできないといけないもの。聖女に目覚めてから、歌が下手だと格好がつかないし」


「お、お嬢さま。自分からレッスンをしたいだなんて。さすがです。以前からピアノのやる気があることを伯爵さまに私からもお伝えしたのですが、なかなか取り合ってもらえず」


 そうね。お父さまにも、ララ先生からもほとんど放置されていたもの。あと、私に必要なのは、魔法の先生ね。


「魔法の先生もお願いできる? 魔力がないことも正直に伝えて」


「ほんとうにお伝えしてもよろしいのですか? アミシアさま、ずっとお恥ずかしいとおっしゃってたじゃないですか」


 まあ、子供のころはね。もうすぐ成人するんだからいちいち恥ずかしがってられないじゃない。魔力がないことを認めて、とりあえず開化させるところから。ほんとに、基礎どころか、基本からやるのよ。


 翌日、ちょうどクリスティーヌのために来ていたピアノのララ先生を捕まえた。ララ先生は歌も上手なのよね。クリスティーヌといっしょに習うのは嫌だけど、そうは言ってられない。ララ先生は不思議そうな顔で私を見ていた。


「伯爵さまがレッスン料を出して下さるのなら私はかまいませんが」


 あ、ちょっといらっとくる。でも、我慢よ。我慢。そうよね。私がレッスンに参加させてもらなくなって半年ぐらい経つものね。


「レッスン料は私が支払います。ララ先生に教わることができるだけで光栄に思います」


 ララ先生はすんなり納得したみたい。


 大広間で歌のレッスンをはじめると、クリスティーヌがお手本として歌うことが多かった。私がそれに追従する形で歌う。クリスティーヌと比較されてることが分かるけど、先生はお父さまよりは公平な審査をしてくれるわ。


「今のはよかったわね、アミシア。クリスティーヌ、いつもはそんなに力まないでしょ? どうしたの?」


 冷静さを欠いたクリスティーヌの方が調子が悪そう。少なからず危機感を覚えてもらえて光栄だわ。


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