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 お父さまとクリスティーヌが農園の復興作業をしている間、お前はなにもできないんだからと、ブドウ園に併設されているワイナリーで待たされた。


「いくらなんでも、なにもできない! は言い過ぎ」


 手持無沙汰なので、ほんとにワインのテイスティングでもしてやろうかしらと、試飲室をうろつく。一度は成人したんだもの。成人前に時が巻き戻っただけだし。やけ酒の一つや二つやらないとやってられない。ワインに手を伸ばしたとき、いきなり誰かに腕をつかまれた。


「きゃ」


「お酒はいけませんよお嬢さま!」


 え、誰この人。上背が高く茶髪。光の入らない試飲室でもはっきりと分かる明るい緑色の瞳が美しい。


「あ、あの。どなた?」


 不意を突かれたのでいつもの強気な態度が上手く活かせないわ。私ったら、なにやってるのよ。


「はっ。これは僕としたことがずっと手を握ってしまい申し訳ない!」


 私から飛びのくように離れる男性。さっきのキリっとした態度のままならかなりのイケメンなのに。動くと彫刻のようなお顔がくしゃっと潰れる。なにこれ、この人もしかしてかわいい? ってそんな分析いらないわ。どこからどう見ても騎士の格好をしている。ラ・トゥール家の騎士に緑の目をした人はいないから別の所属ね。


「はっ。僕としたことが自己紹介も忘れていますね!」


「あ、あのー」


「僕はディオン・ミレーと申しますお嬢さま」


「べ、別に聞いてない」


「なにかおっしゃいましたから? あ、ここは冷えますね。太陽の日差しで温まりましょう。あ、御父上の伯爵様には猪の肉を差し入れたのですが、お嬢さまは何肉がお好きですか?」


「え、肉?」


 見るからに筋骨隆々でイノシシと言わず熊でも倒しそうな人だけど。初対面で聞くかしら? 肉の種類を。


「あ、僕としたことが!」


「ま、まだなにかあるんですか!」


「お嬢さまのお名前は、アミシアさまで間違いないですよね?」


「はい。アミシアです。ほかに誰と間違うんですか?」


 嫌味を言ってやった。銀髪のクリスティーヌと見間違うはずはないでしょうに。


「いやー。お噂はかねがね」


 ふん。どうせ、よくない噂でしょう。


「黒髪がお美しいと。この黒髪は我が国ではなかなか見当たりませんからね」


「え? 髪ですか?」


 ま、まあ髪を褒められるのも悪くないわね。銀髪の方がもてはやされるはずなんだけど。もしかして好みの問題かしら。


「おお、ミレー隊長殿」


 お父さまとクリスティーヌが一息休憩しにきた。お父さまの知り合いだったのね。でも、記憶にないわね。以前は出会っていない。


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