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 アミシア・ラ・トゥールとは不思議な女性だと思った。第一印象は質素なドレスを着ていて、てっきり大人しい女性かと思ったが、話してみるとあまり似合わないなと思った。そして、直感する。本来は派手なドレスが似合う女性なんだろうなと。だが、教会での慈善活動という場であえて自分を押し殺して質素なドレスを着ているとしたら? 


 そう考えただけで俺の胸は高鳴った。自分を偽っている女性がいる。俺と同じように――。


 社交の場で偽りの仮面をかぶって人前に立つ行為は珍しいものではない。だが、そこに崇高な尊ぶべき儚い影を見た。彼女の作り笑顔だ。


 それはそれで可愛らしくていいと思った。笑顔の裏にときどき恐れのようなものを感じることができる。それが神秘性を呼ぶんだ。


 目の前で治癒魔法を施す聖女クリスティーヌが俺を見上げていることに気づいた。


「リュカ王子様。どこを見てらっしゃるんですの?」


「君しか見ていないよ。聖女さま」」


 聖女クリスティーヌも青い瞳がかわいいんだけどね。なんだか、後ろから刺さる先ほどのアミシアの視線が痛くて心地良いんだ。だって、彼女、やきもきしているはずだ。あの、非難してくる黒い瞳が美しい。誰かを射殺すことができる力を秘めていると思う。


 あ、アミシアお嬢さまはもうお帰りのようだ。ちょっと怒ってるように踵を返すのがまた、しおらしい。



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