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[短編]美魔女・権田原ツネ様直伝のお菓子で彼氏をゲット

つい、勢いで。(*´Д`*)


 美魔女・権田原(ごんだわら)ツネ様の『ドキドキ❤︎これでイチコロどきゅん』ワークショップに参加した。


 ハートのエプロン姿で、あたしは出来上がったお菓子を震える手で持ち上げた。


「こ、これが、惚れ薬…!」

「うふふ❤︎だめよ、聖良(せいら)ちゃん❤︎

 薬事法違反になるから、魔法のお菓子って言ってね❤︎」

「はははい!ツネ様!」


 ツネ様は、70を超える美魔女で、「わくわく❤︎温泉ツアー」ではあまりの美乳に鼻血を吹いたばかりだ。


「これを意中の殿方に食べさせれば…うふふ❤︎」

「ああありがとうございます!いってきます!」


 ツネ様の声援を胸に、ワークショップ参加者全員が忍びの如く、四方八方に走り去った。


 あたし、鮎河聖良(あゆかわせいら)は、某男だらけの塾へと走りついた。

「熊谷くんが来るまで、あと7分…」

 あたしは急いで、向かいのビルの屋上に身を潜めた。


 ああ、愛しの熊谷くん!

 あなたは覚えているかしら。

 あの桜まみれになった入学式の日を!

 その日から…あ!熊谷くんが来たわ!


 熊谷くんが、1人で階段を降りてきた。


 ああ、ドキドキする。

 ううん。女は度胸よ!

 当たって砕け散れ!


 あたしは屋上から熊谷くんの前に飛び降りると、


「好きです!食べて下さい!」


 とお菓子を差し出した。


 もちろん、皿にのせて、スプーンも添えて!


 とろん、とお菓子が揺れる。


 熊谷くんは、あたしとお菓子を見ると真っ赤になって逃げ出した。


「う、うわああぁ!」

「待って!熊谷くん!」


 ああ、走る熊谷くん!

 どうしてそんなに早いの?


 逃げないで、鮎のあたしを熊のように食いちぎって!


 あたしは熊谷くんに追いついた。

 後ろのブロック塀に壁ドンして、くいっと顎を持ち上げた。

 その鼻先には、甘いお菓子。


「さあ、食べて…熊谷くん」

「え、いや、そ、そんな!」

「"おっぱい"、好きでしょ?」

「せ、聖良さん!」


 がぶり、と熊谷くんが揺れるおっぱいにかぶりついた。


「どう?美味しい?」

「お、美味しいよ…!」

「そうでしょう?ツネ様直伝の"おっぱいプリン"ですもの」


 すべて食べ終わった熊谷くんに、


「ねぇ、あたしと付き合って?」


と言ったら、❤︎マークの目の熊谷くんが「喜んで」と言って頷いた。


 あれから60年。今も魔法のお菓子の効果は続いている。

 








 昔、妻が落ちてくるなり告白してきたから、恥ずかしくなって逃げたなぁと、思い出したのは、妻が娘に授乳しているのを見た時だった。


「まあ、黙ってていいか」


 今日も妻の作るプリンは美味しい。


 入れ歯になった今も食べられる。



 

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i605003
― 新着の感想 ―
[良い点] なろうラジオ大賞3から拝読させていただきました。 千字が凄い勢いでした。 恋する乙女強し。 でも、幸せならいいですよね。
[一言] プリン。それは魅惑のお菓子。 疾走感ある短編で大笑いしました。面白かったです!
[一言] 向かいのビルからおっぱいプリン持った女の子が降って来たら、普通逃げるよねw しかし逃さない聖良ちゃん、お強い!
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