黒巫女召喚士と暴食之悪魔 ㉕
ベルゼブブが空を見上げているので私達も空を見る。
そして、見る。現実を。
悪魔が大量に出て来る扉がタロットの使徒達が出て来た数に合わせるかのように3つ追加されていた。
師匠達が居てもベルゼブブの増えた力が減らないのに3倍とか普通に有り得ない。
ベルゼブブは元々強かったのに、さらに眷属が増えて強く成るのだ。
「済まない。我々は下級悪魔の処理に当たる。主らは大物を頼んだ」
もしかしてそう言うイベントなの?これって有利に成るのか不利に成るのか分からないんだけど。
「下級くらいならすぐに終わりそうでね」
『少し、舐めすぎじゃねぇか?天使程度の下っ端』
「はぁ?」
「上位悪魔も居るのか?こりゃあ面倒だな」
「三体⋯⋯我々団長格が上位悪魔と戦う。他の者は下級悪魔だ!最優先命令は1つ、生きて帰る事!」
『タロット様の名の元に!』
悪魔達が地上まで降りて来たけど使徒達が相手をするようだ。
お父さん骸骨ペアは⋯⋯喋っている事からアークデーモンだろう。それと戦うようだ。
『1人なら余裕だ』
「1人じゃ無いよ」
いっそ初心に戻りますか。お祓い棒は意味無いし鎌は術系スキルあっても扱い難い。
足の刃をキャンセルしてマナちゃんと刀を形成する。虹色に輝く刀が私の右手に収まる。
刀にした理由は【巫女の舞】に1番適している気がしたからだ。要は気持ちの問題だ。
「それに、私近接で戦っているけど、本来は召喚士だからね」
近接戦闘の時点で巫女要素も少ないけどね。
「行くよ!」
皆の咆哮を聞いて私はベルゼブブに接近する。
「巫女の舞、第一節、【四天竜の神楽】」
足に力を加えてスナップを利用して体の向きをカクカクに変えながらベルゼブブに接近して背後に回ったりする。
舞を舞う度に刀が光輝く。
『ふん!』
ベルゼブブが上段蹴りを放つが神楽を継続したまま体を仰け反らして躱す。
「ギャラー!」
『邪魔だ!』
マナちゃんが突進するがベルゼブブを振るい炎の斬撃を飛ばず。
ひらりと回転して躱しスピードを落とさないままにベルゼブブに突進をする。
イサちゃんも動き大きく鋭く成った爪を膝に向かって振るう。
イサちゃんの爪とマナちゃんの突進が同時に命中する。
ベルゼブブは足に力を入れて地面にめり込ませてノックバックを防いでイサちゃんの爪を腕で防ぐ。
「はぁっ!」
四天竜の神楽の終わりに合わせて刀を膝に振るい切り傷を付ける。
【四天竜の神楽】は回転を主に使う舞なのだが、今回は攻撃用に使った為に少しズレが生じて予想火力は出なかった。
舞を完成刑にして攻撃にするのは難しいね。
バックステップで距離を取り刀を構える。
刀を逆手持ちに替えて体の重心を前に持って行き体制を低くする。
足に力を入れて地を蹴る。
「巫女の舞、第四節、【猫跳び】」
下から上へと振り上げる。ベルゼブブはバックステップで距離を取るが、【風足】を使用した時よりかは低いがそれでも高く跳んで居る状態だ。
マナちゃんが私の下に来てマナちゃんの背中に乗る。
下ではイサちゃんの上にネマちゃんがジャンプして乗っていた。
『【ダークネススフィア】』
黒紫の拳大の大きさがある弾丸がマナちゃん含め私に放たれた。
かなりのスピードだが、イサちゃんが盾を顕現させて防いでくれる。
亀裂が入っているので盾で止められている内に軌道から外れる。
マナちゃんは【加速】と魔法を使ってベルゼブブに突進する。
ベルゼブブに衝突する前に飛び降りてマナちゃんがベルゼブブに突進した後に攻撃する。
マナちゃんの突進を左手で防いで私の振るう刀をレーヴァテインで防ぐ。
「ガル!」「ニャ!」
ベルゼブブの右膝にイサちゃんが噛み付き力を加える。
ベルゼブブの左膝にネマちゃんは連続で爪で引っ掻く。
『小賢しいカス共がっ!【ブースト】』
完全に強化系のスキルを使いよったな。
「引いて!」
その一言で皆が後ろに下がる。
体格的も遅いネマちゃんはマナちゃんが足で掴んで空に飛んで行く。
イサちゃんとマナちゃんと比べると私もだいぶ遅いようでイサちゃんに巫女服の首根っこを咥えて貰い下がる。なんか変な感じである。
『【ダークネスブレイド】【ダークネススフィア】【ダークネスフレア】』
「多いですね!」
何時の間にかダークからダークネスに変わっているし。
レーヴァテインを振るい黒紫の斬撃を放ち、同時に拳大の黒紫の弾丸と黒紫の炎を放つ。
「ガルァァァ!」
イサちゃんが前足に力を入れて踏み締めて高く大きな咆哮を上げる。
次の瞬間に私とイサちゃんを囲うような結界が現れる。
イサちゃんは黒紫色だが、似たような物をマナちゃんも出しているのだが、虹色だ。
ただ、厚さが段違いだった。
斬撃と弾丸と炎が私達を守る結界に衝突して火花とジリジリと言う音を響かせる。
「私だって」
あんまり役に立たないと思いますがね。MPカットもありますし。
「風壁、風玉、展開!」
【風玉】は防御用の妖術では無いが、少しでも多い方が気持ち的に安心出来るのである。
先程の反省もあるのでマナちゃんとの刀を地面に突き刺して巫者の大鎌を取り出す。
「巫女の舞、第三節、【風神の暴君】」
風の壁が霧散し、イサちゃんの結界に大量の亀裂が入り限界を迎えて砕ける。
高速で暴れるかのように、そこには芸の何も無い大鎌の高速の斬撃と残った斬撃と弾と衝突し合う。
【ダークネスフレア】は消えている。
腕は高速で振るい重心を中央に固定、右足は前に出して体制を安定させる。
「巫女の舞、第四節、【猫跳び】」
第三節の最後の舞は持っている物を掲げるのだが、それに合わせて第四節へと繋ぎ火力を少しでも上げて斬撃に対応する。
これで何とか防げた。
インベントリに大鎌を戻して地面から虹色の刀を抜き取る。
マナちゃんは途中から躱すのに徹したようでネマちゃんの目が少し回っている。
ハクちゃんはかなり遠くに居る。
「⋯⋯ニャ!」
目が回っているのから復帰したネマちゃんは目を真剣な眼差しにしてベルゼブブを睨む。
マナちゃんが足を開きネマちゃんを解放して、猫らしく綺麗に着地する。
この中で1番小さく可愛いネマちゃんが睨んでもそれは可愛いだけである。
「コン!」
可愛い担当のもう一体のハクちゃんが近くに来て私に攻撃《STR》支援、イサちゃんに防御《VIT》支援をくれる。
『これは突撃だな!』
わたしの意見に従いイサちゃんの上へと乗る。
毛がゴワゴワしている。
「ガルが!」
イサちゃんが駆ける。マナちゃんの時も思ったが速いスピードの上に乗ると向かい風が強くて目がきちんと開けれなく成ってしまう。
イサちゃんがベルゼブブに接近して、ベルゼブブはレーヴァテインを振るうがイサちゃんは跳躍して躱す。
跳躍して空中に居る時に私は落下して回転して遠心力を乗せて刀を膝に向けて振り下ろす。
イサちゃんはベルゼブブの背後へと着地してクルリと向きを変える。
私は【風足】を使ってベルゼブブからバックステップで距離取る。
ヒットアンドアウェイは大切だ。